3rd 33 ページ34
医局でカルテなどの書類の整理をしていると手術を終えた藍沢先生が戻って来た。
「お疲れ様。難しかったみたいね。」
「ああ。新海が来てくれて助かった。」
そう言った藍沢先生の顔からは疲れが見えた。
「そっちはどうだったんだ？」
「優輔君？胃潰瘍だった。潰瘍自体が小さかったからそんなに出血はしていなかった。ひとまずは安心かな。」
これを聞いた藍沢先生は小さく「そうか。」と呟いた。
余程疲れているのか、しばらく沈黙が続いた。
そして、藍沢先生が口を開いた。
「ここに戻る前、天野奏の病室に行ったんだ。」
「…そう、なんだ。」
「症状がかなり強く出ていた。早く手術をしたほうがいい。取り返しがつかなくなるかもしれない。」
きっと、そんなことは誰もがわかっているだろう。
なかなか、手術に踏み切れない事も…
「なんて声をかけたらいいのかわからなかった。俺は、彼女がピアノが弾けなくなる事を嫌がっている事も、死ぬことを怖がっている事も知っている。だが、なんて声をかけたらいいのかわからなかった。」
苦しそうにそう言った。
「私だったら…って、何回か考えた事がある。でも、決断できた試しなんてなかった。」
「俺もだ。」
「でも…思ったんだ。私は、医者として死ねるならそれでもいいかなって。」
私の言葉に藍沢先生は目を見開いた。
「お父さんとお母さんがそうだったからかな？まあ、なかなかあんな状況ってないけど。なんかそう思うように…」
「ダメだ。」
私の言葉を遮るように藍沢先生が言った。
「そんな死に方はダメだ。お前が、人生楽しかった、幸せだった。そう思えるようじゃないと。」
それだけを言い残して藍沢先生は医局を後にした。
ど、どうしたんだろう…
考えても考えても、その答えがわかる事はなっかた。
．
藍沢side
どうしてあんな事を言ったのだろうか…
自分でも全くわからない。気がついたらそう言っていた。
アイツのあの言葉は、「自分が犠牲になっても患者を助ける」と言っているようだった。
それが、とても嫌だった。
Aが側からいなくなる事がとても嫌だ。
だから、トロントにいくとし付いて来て欲しいと思った。
どうして急にそう思うようになったのか…
考えても答えが出ることはなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 841人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フィアー(プロフ) - 本ニャンさん» ボードに書きました・・・ (2021年2月4日 13時) (
レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
本ニャン(プロフ) - OKです！ (2021年2月4日 13時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
フィアー(プロフ) - 本ニャンさん» ここではなんですので…ボードに書いて聞きたいこと聞いていいですか？ (2021年2月4日 13時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
本ニャン(プロフ) - フィアーさん» 大丈夫だと思います！私も持っていますが、ドラマとセリフが違うところや、カットされているシーンや構成が違ったりとしていましたので！ただ、小説の方も著作物なので丸々書いてしまうのは余り良くないかもしれません。 (2021年2月4日 13時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
フィアー(プロフ) - 本ニャンさん» コードブルーの小説でも大丈夫かな？ (2021年2月4日 13時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：本ニャン | 作成日時：2019年8月20日 18時
