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大島さんは絶望した顔で将さんの方を見ていた。
白石先生はおばあさんの乗る救急車の方へ移っていた。
「…大島さん、貴方も…」
「将君…将君、しっかりして…」
大島さんは体を起こしてそう言っていた。
ケガの状態を考えると体なんて起こしてほしくない。
でも、なぜか止める事は出来なかった。
「先生…先生、助けて。将君を助けて。」
大島さんの目には灰谷先生が映っていた。
なぜ私には言わないのか…そんなことは考えなかった。
でも、患者さんは皆、助けて欲しいよね…
私もそうだった。
助けてもらえるはずの人に見捨てられたくなんかないよね…
灰谷先生に目を向けると灰谷先生は頷き、心臓マッサージを再開した。
「エピネフリン入れよう。」
指示を出された雪村さんは驚いていたけど頷いていた。
「将君…聞こえる?」
大島さんはまだ語りかけていた。
「大変なことになっちゃったね…これから結婚式だっていうのに…」
その言葉に灰谷先生と雪村さん、もちろん私も大島さんを見た。
「…式場で皆、心配しているかな…?」
大島さんの目には涙があふれていた。
「だから先生、助けて…結婚式、やらせて。今日じゃなくていい。元気になってからでいい。ずっと先でいい。先生お願い、助けて。」
大島さんは必死に訴えかけた。
「大島さん。そのためには貴方もちゃんと治療を受けましょう。」
私は大島さんの治療を始めた。
「反応あります。手が少し動いています。」
灰谷先生の心臓マッサージが功を奏したのか回復に向かっているようだ。
『灰谷、聞こえるか。モニターを入れた。心マしている手をどけろ。胸腔内を見る。』
灰谷先生の方から藍沢先生の声が聞こえた。
灰谷先生は手をどかしてカメラを胸腔内に向けた。
『灰谷、後縦隔を見て見ろ。…大動脈の断裂だ。』
その言葉に私の手が止まった。
もう…何もできない…
藍沢先生からもそのような言葉が聞こえた。
「先生…どうしたの?」
手が止まった事を不思議に思った大島さんがそう言った。
今の大島さんにこの事実を伝える事が出来ない…
「でも…中枢側で遮断して、ヘリで翔北に運べば…」
灰谷先生は自分でそう言いながら言葉を止めた。
『そうだ。ヘリは飛べない。』
ああ…ヘリが飛べないことで救えない命があるのか…
とても悔しいと感じた。
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本ニャン(プロフ) - 咲空さん» ありがとうございます!劇場版も喜んで貰えるように頑張ります!! (2022年4月5日 20時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
咲空(プロフ) - 3rdシーズン完結お疲れ様でした!!青井先生と藍沢先生の関係性がとても魅力的で最後まで楽しく読ませていただきました(*^^*)。劇場版の方もとても楽しみにしてます✨無理のない範囲で更新頑張ってください! (2022年4月5日 19時) (レス) @page39 id: ce397de9af (このIDを非表示/違反報告)
本ニャン(プロフ) - 夕紀潤さん» ありがとうごございます!この言葉を励みに頑張ります!! (2021年9月12日 8時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
本ニャン(プロフ) - マナさん» 質問等はボードで受けます。以後、コメント欄でこのような事はしないでください。 (2021年9月12日 8時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
夕紀潤(プロフ) - 最初から一気読みしました。続き楽しみにしています。試験大変だと思いますが頑張ってください。 (2021年9月12日 2時) (レス) id: 965750ff3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:本ニャン | 作成日時:2021年4月24日 21時