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私がそう言うと耕ちゃんの目は大引く開かれた。
私は、トロントには行かない。
「耕ちゃんの気持ちは本当に嬉しい。付き合うの飛び越してプロポーズされるとは思わなかったけど…」
そのままの気持ちを私は話した。
「耕ちゃんの奥さんになる未来も、悪くないと思うし、むしろ良いと思う。幸せだと思う。でもね、私の幸せって、そうじゃないはずなんだ。」
私がそう言うと耕ちゃんの瞳が揺らいだ。
「ああ!耕ちゃんとの結婚が不幸せというわけじゃないよ!当然!」
私は慌ててそう言った。
「ああ、分かってる。」
そう言った耕ちゃんの顔はとても優しいものだった。
「分かってる。Aの気持ちを、考えを、俺はそのまま受け入れる。」
「…うん。ちゃんと伝える。伝えたい。でもね…いざってなると、言葉と考えがまとまらないね。」
私はぎこちなく笑った。
きっと酷い顔だろう。
「取り繕わなくていい。そんなものを、今更気にする必要はない。」
この人は…どこまで優しいのだろう。
どこまで…どれほど、私の事を想ってくれているのだろう。
きっと、私の想像なんてゆうに越しているだろう。
私は、そんな彼に、なんて酷い事を伝えようとしているのだろう。
「私の幸せは…救命医であり続ける事なんだ。最期は…お父さん達みたいに、救命医として。それが、私の幸せなんだと思うんだ。だから…トロントにはいけない。」
私は強く拳を握りしめた。
「私は、ここで救命医としていたい。多くの命を救っていたい…!」
これが私のしたい事なんだと、幸せなんだと、胸を張って言うんだ。
「そうか…でも、それでこそAだな。」
耕ちゃんは優しく微笑んだ。
「…俺は、フラれたのか…」
「えっと…その件に関してはですね…」
耕ちゃんが余りにも悲しそうな顔で言うので私は目を泳がせた。
振った…事に変わりはないんだけど…
「…えっと…待っとくのじゃ、ダメ、かな?」
私の言葉に耕ちゃんはまた目を丸くした。
「ここで、耕ちゃんが帰ってくるのを待つよ。耕ちゃんの帰る場所になるよ。」
「A…ありがとう。」
耕ちゃんは優しく微笑んだ。
「行ってくる。だから、待っていてくれ。」
「うん。行ってらっしゃい!」
私は笑顔でそう言った。
次に会う時は、「おかえりなさい」って笑顔で言うために私は彼を待ち続ける事にした。
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本ニャン(プロフ) - 咲空さん» ありがとうございます!劇場版も喜んで貰えるように頑張ります!! (2022年4月5日 20時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
咲空(プロフ) - 3rdシーズン完結お疲れ様でした!!青井先生と藍沢先生の関係性がとても魅力的で最後まで楽しく読ませていただきました(*^^*)。劇場版の方もとても楽しみにしてます✨無理のない範囲で更新頑張ってください! (2022年4月5日 19時) (レス) @page39 id: ce397de9af (このIDを非表示/違反報告)
本ニャン(プロフ) - 夕紀潤さん» ありがとうごございます!この言葉を励みに頑張ります!! (2021年9月12日 8時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
本ニャン(プロフ) - マナさん» 質問等はボードで受けます。以後、コメント欄でこのような事はしないでください。 (2021年9月12日 8時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
夕紀潤(プロフ) - 最初から一気読みしました。続き楽しみにしています。試験大変だと思いますが頑張ってください。 (2021年9月12日 2時) (レス) id: 965750ff3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:本ニャン | 作成日時:2021年4月24日 21時