3rd 81 ページ34
「青井先生。」
HCUでの作業を終えた頃、冴島さんに声をかけられた。
話したいことがあると。
突然の事で驚いたが、私達はヘリポートへ向かった。
「冴島さんが私に話したいことって珍しいね。」
「うん…そうね。」
しばらくの沈黙が流れたがそれはすぐに断ち切られた。
「青井先生は、救命を辞めたいと思ったことはないんですか?」
そう訊かれ、私は固まってしまった。
でも、私の答えは1つしかない。
「ないよ。私は、ずっと救命でいるつもり。」
「自分の命が脅かされてでもですか?」
「うん。辞めない。まあ、私みたいな虚弱体質の人間がいるところじゃないのは重々承知してる。今回だって、地下に降りることは許されなかった。それは、本当に悔しかった。」
私は冴島さんに語り続けた。
「私、もし現場で自分が死ぬことがあっても、それは本望なんだ。死ぬなら、救命医として死にたい。お父さんとお母さんがそうだったように。私は、人の命を救って死にたいから。」
「青井先生…」
「あ、でも!今すぐ死にたいわけじゃないからね!?まだまだ現場に出たいし、冴島さんみたいに結婚もしてみたいから!…私の場合、相手はいないんだけど…」
死ぬなら、救命医として死にたい。
多くの命を、救いたい。
その多くの命の中に私の命は含まれていないけど…
「…救命医じゃなくても、命を救う事はもちろん出来る。そんなことは当たり前。でもね、私は目の前で消えかかっている命を無駄にしたくない。必死に助けを求めている人に手を差し伸べたい。その手を、掴みたい。自分だけ安全な場所で患者を待っているなんて、そんなの嫌なんだ。だから、今回は本当に悔しかった。」
「…」
冴島さんはじっと私を見つめていた。
「自分語りしちゃったよね!?多分、冴島さんが訊きたかった答え返せてない気がするんだけど…!?」
「大丈夫ですよ。…ちょっと、迷ってて…」
冴島さんは顔を伏せた。
「藤川先生の異動の事?」
「はい。私から言っといて…なんですけど…」
「…私にはよくわからないけど、もう一度2人で話し合ってみればいいんじゃないかな?ほら、せっかく助かった命なんだから、時間は、たくさんあるよ。」
「青井先生…そうですね。そうします。」
そう言った冴島さんの顔は少し晴れやかだった。
2人がどんな決断をするかはわからないけど、2人が決めた事を、私は全力で応援しようと思う。
1006人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
本ニャン(プロフ) - 咲空さん» ありがとうございます!劇場版も喜んで貰えるように頑張ります!! (2022年4月5日 20時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
咲空(プロフ) - 3rdシーズン完結お疲れ様でした!!青井先生と藍沢先生の関係性がとても魅力的で最後まで楽しく読ませていただきました(*^^*)。劇場版の方もとても楽しみにしてます✨無理のない範囲で更新頑張ってください! (2022年4月5日 19時) (レス) @page39 id: ce397de9af (このIDを非表示/違反報告)
本ニャン(プロフ) - 夕紀潤さん» ありがとうごございます!この言葉を励みに頑張ります!! (2021年9月12日 8時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
本ニャン(プロフ) - マナさん» 質問等はボードで受けます。以後、コメント欄でこのような事はしないでください。 (2021年9月12日 8時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
夕紀潤(プロフ) - 最初から一気読みしました。続き楽しみにしています。試験大変だと思いますが頑張ってください。 (2021年9月12日 2時) (レス) id: 965750ff3e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:本ニャン | 作成日時:2021年4月24日 21時