検索窓
今日:30 hit、昨日:55 hit、合計:95,730 hit

3rd 67 ページ20

夜、特に残った仕事もなかったけど、帰る気にはなれなくてスタッフステーションに残っていた。



ただぼーっと、医学書を眺めていた。



内容なんて、ちっとも頭に入ってこない。



緋山先生が…心配で…



検査結果が出るまでは…何もできないのに…



「青井!何暗い顔してんの。」



緋山先生の声がした気がして振り向いた。



いるはずがないのに…



そうだとわかると急に胸が締め付けられた。



緋山先生が…何かの感染症だったらどうしよう…



エボラだったら…



緋山先生が戻ってこなかったら…



でも…泣きたいのは緋山先生だよね…



それに、刺してしまった名取先生だって責任を感じてるし…



私がここで泣く資格なんて、ない…



…何だか、懐かしいな、この感情…



私は自嘲気味に笑った。



昔、緋山先生が電車の上から落ちて、心停止した時もこんな気持ちだったな…



あの時は…どうしてたっけ…



そう思っているとスタッフステーションの扉が開く音がした。



顔を上げると扉の所には藍沢先生がいた。



気まずくて私はすぐに顔をそらした。



「帰らないのか?」



「うん…ちょっと…」



いきなり向こうが話しかけてきたからビックリした。



「…そうか。」



それだけ言って藍沢先生は私の前の席に座った。



暫く無言の状態が続いた。



藍沢先生は何か仕事をしていたけど、私は何もせずぼーっとしていた。



「…大丈夫だ。緋山は戻ってくる。大丈夫だ。」



藍沢先生が突然そう言った。



その言葉を聞いて涙が溢れた。



そうだ…前も…そう言ってもらったんだ…



「どうせ、自分が泣いたらダメとか思ってたんだろ。」



「だって…だって…嫌だよ…嫌だぁ…」



私は子供のように泣き始めた。



耕ちゃんは私のそばに来て抱きしめてくれた。



「大丈夫だ。緋山は何もなく帰ってくる。前も帰って来ただろ。」



私は耕ちゃんの服を強く握った。



喧嘩中なのに…



私が一方的に気まずくて避けてたのに…



何でこんなに優しいのだろう。



「大丈夫。大丈夫だ。」



耕ちゃんはそう言いながら私の背中を撫でてくれた。



私が泣き止むまで耕ちゃんは側にいてくれた。

3rd 68→←3rd 66



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (98 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1006人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

本ニャン(プロフ) - 咲空さん» ありがとうございます!劇場版も喜んで貰えるように頑張ります!! (2022年4月5日 20時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
咲空(プロフ) - 3rdシーズン完結お疲れ様でした!!青井先生と藍沢先生の関係性がとても魅力的で最後まで楽しく読ませていただきました(*^^*)。劇場版の方もとても楽しみにしてます✨無理のない範囲で更新頑張ってください! (2022年4月5日 19時) (レス) @page39 id: ce397de9af (このIDを非表示/違反報告)
本ニャン(プロフ) - 夕紀潤さん» ありがとうごございます!この言葉を励みに頑張ります!! (2021年9月12日 8時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
本ニャン(プロフ) - マナさん» 質問等はボードで受けます。以後、コメント欄でこのような事はしないでください。 (2021年9月12日 8時) (レス) id: 4aed024ceb (このIDを非表示/違反報告)
夕紀潤(プロフ) - 最初から一気読みしました。続き楽しみにしています。試験大変だと思いますが頑張ってください。 (2021年9月12日 2時) (レス) id: 965750ff3e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:本ニャン | 作成日時:2021年4月24日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。