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息苦しさで目が覚めた。いつの間にか寝てたみたいで電気はついている。息苦しさの原因は体に巻きついた腕で、それを辿っていくと眠りこけている金髪がいた。恐る恐る顔を覗き込むとそれは啓介で。

『～～～ッ…！！』

声にならない声を上げて上体を起こす。訳も分からぬままぐるぐると考えていると目の前の金髪がむくっと起き上がった。寝起きの半開き目がわたしを射抜く。

なんでいるの。なんで来たの。いつ来たの。聞きたいことはいっぱいあるのに胸がいっぱいで、言葉より先に頬を涙が伝う。

『……ごめん、なさい』

俯いたわたしの涙を、骨張った指が拭う。

｢何て言えば良いのか分かんねーからハッキリ言うわ。｣

びく、と体が跳ねる。別れ話かな。

啓介はジーンズのポケットを探って何かを取り出し、わたしに差し出した。

｢一緒に住もうぜ。
俺が帰ってくるのを毎日待っててくれよ。｣

それは家の鍵だった。鍵にぶら下がったストラップの紐をわたしの指に引っ掛けて、その鍵ごとわたしの手を包み込んだ。

｢あ、俺来た時カギ開いてたぞ。気ぃつけろよ。｣

ムードの欠片もない発言には呆れるけど、それでも彼とこうやって普通に話せるのが嬉しい。包み込んだ手を優しく引かれて彼の胸に飛び込んだ。わたしの涙が啓介のスウェットの肩口を濡らす。

｢おい俺の服に鼻水つけるんじゃねーぞ。｣
『…ころす。』
｢はは、ごめんって。｣

後頭部をぽんぽんと撫でられるとガチガチにこわばった心がほぐれていくみたいだ。しばらくすると啓介はわたしを抱きしめたまま寝転んだ。

『ちょっと啓介さん、なにわたしのこと抱き枕にしようとしてるの？』
｢いーじゃん。Aの体柔らかくて最高なんだよ。｣

さらっと変態発言をした彼はすぐに寝息を立て始める。彼の頬に触れると無意識かどうか、わたしの手に頬擦りをする。自由奔放で、甘え上手で、わたしのことを分かってくれる、そんな猫みたいな彼との生活を夢見てわたしも目を閉じた。