スノードロップ 2【HiranoSho】 (ページ32)

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77 you ページ32

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紫耀くんが居なくなっても、もちろんファンの方は次々に来て下さるので手と意識だけはここに置いて、頭の中だけは数週間前のことを思い出している。

海人くんとレイコさんに、
大事なのは何よりも" 相手を信頼すること "だと
教わった次の日紫耀くんの家で意識してみたけど、

他人のチョコ食べて見せつけるように美味しいと言われたこと、

ご飯を食べてくれなかったこと、

私が選んだ服で出勤してこなかったこと、

全部にわたしへの信頼を感じられず、

当然、紫耀くんのことをこの状況で信頼するなんてことは出来なかった。

ご飯を食べてくれなかったのは、本当にしいたけが嫌いだったからかもしれないけど。

まだまだ過去のトラウマがあったのかもしれない。

全部がダメだと言われてるように感じて、仲直りと言われた時にはもう感情も捨てているほどだった。

作り笑いだったらいくらでも出来る。

私の得意技じゃない。なんて、自嘲気味にもなる。

自分を卑下するにまでしたあの世界に

あの場所に戻るなんて今までの私なら考えもしなかった。

でもそんなところに戻ろうと決めたのは、
ただひたすら紫耀くんから逃げるためだったと思う。

どんな理由をつけてでも、もう一緒に居られないと思った時に作られた唯一の「逃げ道」に私は逃げただけ。

そこにまでも追いかけてくる紫耀くんは、
どうしても私の心をかき乱す。

私にどうしろと言うのだろうか。

考えに更けすぎた私は目の前のサインを見て落胆。

「ごめんなさい！間違えちゃった…！」

ファン「全然大丈夫です！それすらもプレミアです！」

キラキラした笑顔で両手にそれを抱えた高校生くらいの女の子。

男のことを考えて何千回と書いてきた自分のサイン間違える芸能人がどこにいるんだよって話。

「ほんとにごめんね！これ、どうぞ。」

机の脇にあった予備の写真集に新しくサインを書いて渡す

二個もいいんですか？！と目を輝かせるこの子にどんな顔を向ければいいかなんて一択なのに。

私はこの偽りの仮面を被り続けていてもいいのだろうか。

「いつも応援ありがとう、また会えたら嬉しいな！」

ファン「はい！」

私には眩しいくらいのまんべんの笑みで手を振る彼女が羨ましいとまで思った。