スノードロップ 2【HiranoSho】 (ページ20)

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この度はお時間を作っていただきありがとうございます。

そう声をかけて目の前に座ってるのは、数年前に握手会の会場で見たあの人だ。

「西内マネージャー、ですか？」

西内「久しぶりだね、Aちゃん。」

社長の仕事を放り投げて監視をしにきたらビックリ。

彼女の元マネージャーが現れた。

「えっ、でも西内マネ、今代表取締役って言いました…？」

西内「そうなんだ。Aちゃんが居なくなった一年後だったかな？事務所の社長が急に私を社長に任命して、自分は退くって。」

「そうだったんですね。」

西内「それより今日は、話したいことがあって来たんだ。」

「話、ですか。」

西内「まず、あの時守れなかったことを謝りたい。もっと俺がしっかり上に対応求めてれば、苦しまずに済んだのに。ずっと後悔してて、次会えたら必ず謝りたいと思ってた。」

「西内マネは、十分助けてくれてました。なので、頭あげてください。当時、他のマネは全く話を聞いてくれなかったのに、西内マネだけは違くて…。本当に感謝してるんです。私の方が急に消えて、心配かけてすみませんでした。」

俺が会話に入る隙間は少しだってないけど、

少なからず彼女の味方が当時もいたのかと思うと、西内さんにお礼を言いたくなる。

でも、そんな感情は次の発言で消滅する。

西内「でね、図々しいって分かってるんだけど、

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また、芸能界に戻る気はない？」

この男は、散々Aちゃんを苦しめたあの場所に戻そうとしている。

西内「これ、連絡先だから。もし気が向いたり、分からないことがいつでもあれば連絡してね。」

名刺を彼女に差し出すと、俺に一礼して部屋を出ていった。

しばらく、二人とも動けずにいたけど、

「平野さん、定例会のお時間です。」

彼女の方が先に正気を取り戻したようだ。

『うん、』

ここで、戻るの？とは到底聞くことが出来なかった。

いや、戻らないと思い込んでいた。

だって、Aちゃんをあんなにボロボロにした世界だから。

そんな世界に、自分を強く見せようと完璧を装っているか弱い彼女が戻るなんて、考えたくもなかったから。

俺たちは、現実から背を向けすぎたのかも。