スノードロップ【HiranoSho】 (ページ36)

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廉と二人きりになったと思うだけで嫉妬。

正確には、二人きりじゃなくて二人で社内回って来ただけだけど。

『ずっと思ってたんだけど、なんで海人と廉にはタメなん？』

気になってたけど、聞くか迷ってた質問。

この質問には予想外にあっさり答えてくれた。

「元々ファンだったから、ですかね？」

『俺もそうなんやけど、』

「平野社長は、私の雇用主なので。」

言うなれば、飼い主とペットですよ。

そういった彼女を今後どういう目で見ればいい？

『じゃあ、これからAちゃんはウサギ？』

「今のは例え話です！」

しかもウサギ…と苦笑いするAちゃんに、それでもタメで話して欲しいと申し出るもキッパリ断られた。

ロビーに出る手前、戸惑う素振りを見せるAちゃん。

「平野さん、あの？」

『流石に取引先には自家用車では行かないよ。運転手にそこまで車回してもらってるから、ほら行くよ。』

腰に手を回してエスコートをする。

少しして秘書に向ける態度じゃないと思ったけど、もうそんなことは気にしない。

そのままロビーに出ると、色めき立つ女性社員。

何処と無く聞こえる、
“美男美女” とか “新しい秘書さんが羨ましい”
という言葉にニヤニヤが止まらない。

そのまま後部座席に乗り込むと、出発する車。

「運転手さん、居たんですね。」

『うん。』

「何で朝はわざわざ自分で運転を？」

『それは、俺が運転が好きだからかな？』

ここで、二人きりになりたかったからという勇気はなかった。

「それなら、いつも海人くんに迎えに来てもらう必要ないじゃないですか。」

『たしかに！』

「いや、確かにじゃないですよ… 」

呆れられてもいい。Aちゃんを傍においておけるなら。

「私、本当に何もしないで良いんですか？」

『うん。車で待ってて。』

「でもそれじゃあ、私が来た意味って…」

『いーから。待ってて。』

普段は秘書の同行なんて必要ないけど、

あそこに残して来るのが勿体なかったから。

『すぐ終わらせるから！』

「お仕事は真面目にしてください。」

曲がっているネクタイを直される、その仕草に胸きゅん。

やっぱり、連れてきてよかった。