スノードロップ【HiranoSho】 (ページ12)

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「 …のさん、」

「 …らのさん、、！」

遠くの方から聞こえる天使のような声。

「ひらのさーーん？」

『ふえ！』

目を薄らと開けた所にAちゃんの顔がアップで現れる。

こんなの、とてもじゃないけど心臓に悪い。

「ふえってなんですか？笑」

ふふっと笑いながらリビングに戻るところを、のそのそと追いかける。

その間に平野さんは寝起きが悪いなーと呟いてる彼女を見て、初めての居候というタイトルで妄想し始める俺。

リア恋かよ！

「平野さん、顔洗ってきますか？それとも、ご飯先にしますか？」

『 …あ、顔洗ってくる』

それとも私？の王道のくだりを妄想してしまったのも申し訳ない。そもそも朝からなんてハレンチなんだ俺は。

「分かりました、タオルは勝手ながらご用意させてもらっているので、使ってくださいね。」

妄想を止めるため顔をペちペちしながら辿り着いた洗面所には、自宅のタオルが用意されていて。

契約にあたって自宅の中はどこでも見てもらって構わない、というように話したが少しだけ、恥ずかしい気持ちになった。

秘書の時はあんなにやだったのに、
人が違うだけでこんなに感情が違うなんて、不思議。

いつも通りの洗顔を済ませ、リビングに戻るまでに香る朝食の匂いで幸せな気持ちになる。

「おかえりなさい、平野さんは和食と洋食どっちが好きですか？」

『朝は和食の方が好きかな』

「良かったです。今日は聞いてなかったので無難に和食にしてみたので、」

ほっとした顔をしたのもつかの間、
何やらメモをしているらしい。
俺のトリセツでも作るのだろうか。

『いただきます』

口に入れる度、幸せになるご飯などこの世に存在したのか、と感銘する。

…けど、

『見すぎ、、』

流石にそんなに見られると恥ずかしい。

「すみません、！お口に合うかが心配で…。」

『美味しい、今まで食べたものの中で一番。』

そういうと、握手会で見せてくれていたような満点の笑顔になった。

「ありがとうございます！」

俺がご飯を食べ終わったあとも、鼻歌を歌いながら食器を洗っている彼女が微笑ましい。