ネジ7つ ページ8
「…別に、大丈夫ですよ。そう遠い所でもないし、人通りも多いですから」
Aはようやく通路に出られた。
「お気遣いありがとうございます」
一礼して、店を出ていく。
「…つれない、でもそこがまた好きです…」
「この上なく同意…」
コナンと安室は熱い握手を交わした。
___
ただ黙々と足を進め、自宅に到着する。
しかし郵便受けを覗いた時、空っぽだった頭にクエスチョンマークが浮かべられた。
入っていたのは厚紙1枚、ハガキではない。内容は1文のみ。
「『今夜お会いしましょう』…」
差出人はKID、とある。そうこの手紙は確か、予告状というのだ。
前にも何度かあった。
手紙が何かも、そこに書かれた言葉の意味もわかるけれど、なぜ会いたいのかだけは理解できない。
皆、そうだ。
Aは数分考えて、やっぱり分からなかったので家に入った。
___
夜、Aの部屋の窓が軽快にノックされる。
開けると視界いっぱいの白、風に乗って届く薔薇の香りが世界を埋めた。
「こんばんは、レディ…こうしてまたあなたに会える日をずっと待っていました」
白い手がAの手をすくい、軽く口付ける。
「どうしてあなたは私の部屋の位置まで知っているんでしょうね」
「愛ゆえですね」
「ああ…なるほど」
愛か。そうか。
では、愛、とは?
…考えても仕方のないものだろう。
「……それで、どういったご用件で?」
「マジックショーの招待です。次の満月の夜…この場所に来て頂けませんか?特等席でご覧になれますよ」
手渡された地図。細かく書き込まれていて分かりやすかった。
「特等席、ですか。私に教えても良いんですか?」
「あなただから教えるんですよ。一番よく見える場所で…その夜の間は、私だけを見つめてほしい…」
キッドの目が切なげに細められる。
Aの目は地図しか見ていなかった。
「どうですか?」
「用事がなければ」
キッドの顔が輝く。
「それでは、楽しみにしていてくださいね!最高の夜にすることをお約束します」
そう言ってキッドは去った。
部屋にはいつの間にか薔薇の花が生けられていた。
甘い香りがする。
…本数を数える気には、ならなかった。
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Mito - すごくいい作品ですね 私はこの作品が大好きですよ (2021年3月28日 23時) (レス) id: 121f4f7b22 (このIDを非表示/違反報告)
水落(プロフ) - コメントありがとうございます!色々読んで頂けているようで、ありがたい限りです!(まさかほろにがクラゲさんからコメントを頂けるとは思っておりませんでした、光栄です!こちらこそ応援してます!) (2019年12月6日 14時) (レス) id: 1398ffddc4 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - はちゃめちゃに名作でした…おかしいな、と思ったことをそのまま世界観にしてしまう発想が素敵・:*+.\(( °∀° ))/.:+連載中の他作品も読んでます、いつも細部の凝り方がすさまじいなと圧倒されます……これからも応援してますね!! (2019年12月5日 18時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
水落(プロフ) - シンアさん» 最後まで応援ありがとうございました!これからもお楽しみいただける作品を作れるよう頑張ります! (2019年4月22日 21時) (レス) id: 1398ffddc4 (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 完結おめでとうございます。お疲れ様でした…。また作品楽しみに待っています。 (2019年4月22日 17時) (レス) id: f6e4c29514 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水落 | 作成日時:2018年11月3日 18時