ネジ13つ ページ14
「おっ…おめーら…」
博士宅に意気揚々と駆け込んですぐ、コナンはわなわなと震えだした。
「おうコナン!おっせーぞ!」
「もう夜遅いですよ!」
「コナンくん待ってる間に歩美達こーんなにお姉さんと仲良くなっちゃったもんねー♡」
歩美の言葉通り、3人はお姉さんにべったりくっついてくつろいでいた。
な、なん…ずりい!
こっちは先程まで必死で追いかけっこしていたというのに。
「んだよ…おいもう離れろ、俺と博士でお姉さん家まで送ってくっから。おめーら明日朝早くから遊びに行くために博士んちに泊まるんだろ?もう寝ろよ」
そういって半ば無理矢理子供達を剥がしていく。
「あーっ、嫉妬は良くないですよコナンくん!」
「大体、お姉さんをこんな時間までここに留まらせたのは誰だったかしら?」
「う"…」
頑としてお姉さんの隣を動こうとしない灰原の言葉に痛いところを突かれる。
「つーかよぉ、ねーちゃんも博士んちに泊まっていけばいいんじゃねーか?」
「あっ、それいいですねー!そうしましょうよ!」
「そうだよ!お姉さんも明日一緒に遊びに行こー!」
再び3人がお姉さんにくっつく。コナンの顔がひきつる。
急にそんなに仲良くなられると、なんというか、複雑だ。
知らないところで関係性が変わるのも、それによって人間性が変わるのも、ほんの少し寂しい。
コナンは俯いたが、直後聞こえた言葉にすぐ顔を上げた。
「いえ、遠慮しておきます。お邪魔しました」
Aは一礼して、くっついていた3人の腕からするんと抜け出し玄関へ歩いていく。
すっと伸びた背筋も、ブレない視線も、迷いない歩の進め方も、全部コナンが知っているいつもの彼女のものだ。
そうだ、変わってない。誰と仲良くなったとしても、あの人はあの人のまま。
“Aさん”のままだ。
それが、どんなに、安心できることか。
「……顔、にやけすぎ。」
「ぅえっ?ま、まじで?」
「マジよ。さっさと引き締めて彼女を送ってあげれば、独占したがりの探偵さん」
半目の灰原に行ってくる、と返してからコナンも博士宅を出る。
一度頬を叩いて深呼吸した。顔がやけに熱いのは、きっと叩いたせいだ。
「Aさーん!!」
少し先で振り返るひと。
走って追いついたコナンはそっと手を繋ぐ。
「…何か?」
繋ぎ返されない、けれど振り払われることもない手。
今はそれで十分。
…十分、嬉しい。
「一緒に帰ろ!」
コナンは赤い頬のまま眉を下げて笑った。
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Mito - すごくいい作品ですね 私はこの作品が大好きですよ (2021年3月28日 23時) (レス) id: 121f4f7b22 (このIDを非表示/違反報告)
水落(プロフ) - コメントありがとうございます!色々読んで頂けているようで、ありがたい限りです!(まさかほろにがクラゲさんからコメントを頂けるとは思っておりませんでした、光栄です!こちらこそ応援してます!) (2019年12月6日 14時) (レス) id: 1398ffddc4 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - はちゃめちゃに名作でした…おかしいな、と思ったことをそのまま世界観にしてしまう発想が素敵・:*+.\(( °∀° ))/.:+連載中の他作品も読んでます、いつも細部の凝り方がすさまじいなと圧倒されます……これからも応援してますね!! (2019年12月5日 18時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
水落(プロフ) - シンアさん» 最後まで応援ありがとうございました!これからもお楽しみいただける作品を作れるよう頑張ります! (2019年4月22日 21時) (レス) id: 1398ffddc4 (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 完結おめでとうございます。お疲れ様でした…。また作品楽しみに待っています。 (2019年4月22日 17時) (レス) id: f6e4c29514 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水落 | 作成日時:2018年11月3日 18時