外れたネジほど愛おしい【名探偵コナン】

ネジ1つ ページ2

コーヒーの香りが好きだ。

飲めはしないが、気持ちが落ち着くから。

だから、ふと鼻腔をくすぐったコーヒーの香りに誘われてカフェに入るのは珍しいことじゃない。

そうやってたまたま見つけた喫茶ポアロは最近のお気に入りだ。とっても雰囲気が好み。

こんなにいい店を見つけられたのだから、珍奇なことの1つや2つぐらいは…看過すべきなのかもしれない。

「Aさん！ご注文のオレンジジュースと、サンドイッチですよ！」

眼前にそっと大人気メニューが置かれる。

「ご注文したのはオレンジジュースだけだった気がしますが」

「サービスです！あなたに僕の作ったものを食べてほしくて…」

「そんな毎度毎度申し訳ない…と思ってはいますがなんでさりげなく相席したんですか？」

「まあいいじゃないですか、代金の代わりということで」

珍奇なこと代表、アルバイト店員安室透は頬杖をついてAの正面の席を陣取った。テコでも動かぬ構えである。

「お仕事はよろしいので？」

「たった今休憩に入りました！」

「最近は安室さん、Aさんの来る時間に休憩取れるよう調整してるんですよ〜」

近くを通った榎本梓が補足していく。

「あんまり来る時間決まってないのに、大変じゃないですか？」

安室は少し頬を染めて答える。

「…好きですから…大丈夫なんです」

「大変なのが？」

「あなたが。」

「なるほど〜…」

Aは一応分かったフリをしてサンドイッチを口に入れた。

実際は何も分かってなかったけれど。

「私もAさんが好きですけど、安室さんは大好き！って感じですよね」

「や、やめてくださいよ梓さん…その通りですけど…」

ごくんと嚥下。空いた口で疑問を放つ。

「なんで好きなんですか？」

「…？自分の手を自分で動かせることに理由がありますか？」

純粋な疑問に返された純粋な答え。

「…なるほど〜…」

そこにそれ以上質問の余地はない。

つまり、そういうものなのだ。

Aはもう1口サンドイッチを味わい始めた。

「ふふ…私、Aさんがものを食べてる姿を見るの、好きなんですよね。」

梓は和むな〜、とにっこりした。

「分かります、なんだか癒されますよね」

「疲れてる時とか、Aさんにお菓子あげたくなっちゃいます」

「その気持ち凄く分かります。それに…これだけたくさん話してても全く意に介さないところも良いですよね」

「分かります！」

まあ単純に、全部右耳から左耳に通り抜けているだけなのだけれど。

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