むつらぼしのおひめさま

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まずは部屋のものを全て漁った。隅から隅まで。
この世界での名前はもう既に決まっていた。机に置いてあったノートに記名してあった。

【星野すばる】。それがここでの私の名前らしい。

クローゼットの扉には冬服と思われるセーラー服がかかっていた。
目立ったものは制服だけで、他に学校で使うであろう教科書が何冊か。パラパラと捲って内容を見る限り高1の内容なのでこの制服も高校のなのだろう。

他に気になるものといえば、ノートと一緒に置いてあった星の飾りがついたペンラみたいな何か。何かはまじでわからん。だけどラノベを読み漁ってきたものにとってこれがなんなのかは想像にかたくない。
静かに机の引き出しの奥に仕舞って忘れることにした。

だがここで違和感が1つ。
他にもなにか手がかりが欲しくて、クローゼットの中や戸棚を漁ってみたりもしたが驚くほどなにも出てこなかった。恐らく、机に置いてあるノートも白紙。高校より前の記録媒体がこの部屋に一切ないのだ。
それには少しだけ悪寒を覚えた。
まるでこの世界に混ざるために作られたキャラクターみたいだ。まぁ実際トリップして来たので間違ってはないのだけど。

そして自分の部屋を出て驚いた。
なんとここマンションの一室らしい。しかもリビングキッチンの冷蔵庫のメモを見てさらに驚いた。【星野すばる】の両親は海外へ赴任中で帰ってくるのが当分先らしい。これには思わず｢まーじか……｣と声が出てしまった。


(ラノベの世界かここ……。だっっる……)


余りの人間の書けて無さに、自分の身に起こっていることながら呆れてしまった。
こんな設定、アニメの世界にトリップしたのだと言ってるようなものだから。


(頑張れ私……強く生きよう……)


そう誰もいないリビングキッチンで1人誓った。

3話 視線の先→←.

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