嫌な奴、【松田陣平】

イケメンよ私を巻き込むな ページ22

｢......舞崎さん。本当にやらない？｣


｢…いえ、やらさせていただきます。｣


Aは負けた。
諸伏君のあの目を見て断れる人がいたのなら、私は崇拝したい。


｢本当に?!...ごめんね上村さん。俺舞崎さんとやるね。｣


｢そう…｣


それだけを言い残して席に戻る上村さん。
ああ、色んな意味で殺されそうだ。
言ったからには仕方ない。
やるけども、上村さんのあの殺気を誰かしまって欲しい。目が合う位置にいなくてよかったと心底思う。あれを直に受けたら耐えられません。私には。


｢舞崎さん！よろしくね。｣


｢あ、うん。｣


なぜだろう？脳天気なこの顔に無性に腹たってきた。
一旦はっ倒したい。


｢先生。俺と舞崎さんでやります。｣


そして皆してこっちを見るな。目を瞑れ。何も視界に入れるな。


｢おお！そうか。｣


｢俺が実行委員長やります。｣


｢本当か諸伏！舞崎もありがとな！…皆聞いていたと思うが、実行委員長と副実行委員長は1年生の諸伏と舞崎に決まった！体育祭の流れを知ってる2、3年生は積極的に2人のサポートを頼みたい。これから2人にはもう少し話があるから、他の皆は気おつけて帰るように。以上解散！｣


その一声でザワザワし始める。ちくしょう。
私もそっち側に行きたい。帰りたい。
いや帰らせてくれ。
そしてそこの女性の皆様そんなに熱い視線を向けないで。


｢舞崎さんって松田くんと仲いいんじゃなかったの？｣


いえ仲良くないです。


｢諸伏君も誑かすなんて何様のつもり？｣


誑かしてないです。


｢ブスのくせに。ららの方が可愛いのに。｣


こそこそ話してるつもりだろうけど全部聞こえてんだわ。
それに否定しないよ。
こっちこそ疑問なんだよね。
今思い出したけど上村さんって学年1可愛いって言われている子だって雅が言ってた気がする。
そんな上村さんみたいな可愛い子と一緒にやった方がどう考えても楽しいでしょ。


｢舞崎さん。｣


｢...ん？｣


｢ごめんね。巻き込んで。｣


本当だよね。自覚あるならなんで上村さんとやらなかったんだ。


｢舞崎さんじゃないと駄目なんだ。｣

これ告白の予行練習かなにか？
どこぞのチープな恋愛ドラマみたいなセリフを言われましても。
それより...


｢ごめん、声に出てたか。あと疑問なんだけどさ、これ告白の予行練習とか？｣


｢それは違うかな。違うけど、舞崎さんは分からないままでいいよ。｣


いつか分かるかも、という彼は心なしか嬉しそうな顔をして笑っていた。

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

←息は潜めよう。いっそ吸わない。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す