【安室透】黒い世界に舞う天使４【黒の組織】

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「お待たせしました」


「お、来た来た。じゃあ行こっか」


スマホの画面を見ていた顔を上げ、5年前よりも薄くなったメイクの風待さんは、ベンチから立ち上がった。


彼女と出会って早5年。


私は無事翌年に東都大に合格し、今は大学4年生。


適当に入った文芸サークルで、思わぬ才能が発揮され、出版社の目に留まり小説家デビューしちゃったり、風待さんに紹介されたアルバイトで、広い年代の友達ができたり。


ここ数年で、生活が一気に変わった気がする。


今だって、月に数回しかないバイトに風待さんと向かっているところだ。


一方風待さんはというと、彼女もまた、去年4年間お付き合いをしていたという人とめでたく結婚。


私も結婚式までは呼ばれなかったものの、二次会には参加させてもらった。


旦那さん、硬派なイケメンって感じだった……。


お腹の中には赤ちゃんもいるらしく、今まさに幸せ絶頂な時期だ。


「着いたよ」


「今日はこんな廃屋みたいなところなんですか……？」


メールに古い家と書いてはあったけれど、ここまでとは……。


今まで色々な場所で仕事をしてきたけれど、こんな汚らしいところは初めてだ。


私たちのバイトの仕事内容は、風待さんが最初に説明してくれた通り様々で、探し物をしたり、荷物を運んだり、今日の様に家の掃除をしたり……時には、レストランで食事をしたりするだけと、本当にこれバイト？と疑ってしまう様なものも少なくはない。


そんなバイト、怪しさ満点だが、仕事仲間はみんな優しいし、ちゃんとお給料は支払われるし、しかも高いし、なんだかんだいって結構続けてしまっている。


風待さんが玄関の扉を開け、中に入る。


少し身構えながら、私もそれに続くと＿＿


「あら、風待さんと涼暮さん。みんなもう始めているわよ」


先輩のおばさんが玄関で待っていた。

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