白銀の剣と虚弱体質 【文スト】【ドストエフスキー】

trading　２ ページ15

「…流石はマフィアの幹部。少し見直しました。で、見破ったから何です？現在、貴方の肉体は意識の無いまま部屋に置かれて居ます。僕と彼女は日頃から訓練して居ますが貴方は？」


話し方、瞳…今の彼の何処を見ても魔王という言葉がとても似合う。

溺れてしまいそうな程黒い瞳には何も映されて居ない。


「…なぁ、如何して運び屋に連れ去られる時にこれを使わなかった？それは運び屋が貴様の異能の突破方法を知っていたからだ。だから、君はその時に使わなかった。私は生まれ乍らの王。王となるのは情報を制する者だ。君は愚鈍にもその王に仕える機会を逃したのだよ。」

Aはそう云って、机に置かれた照明を手に取った。

あぁ…此処まで全て彼の描いたシナリオ通りだ。

一寸の狂いも無い。


私は天井から吊るされた人間の身体を見ながら恍惚と浸った。


「…さて、行きましょうか。」

彼の言葉で私はその身体から目を離した。

「そうだね。目的の物以外は全て焼き捨てるんだよね？」

「えぇ。あと、生き残っている宝石達が居れば浄化もお願いします。」

「判った。」


云われた通りに金の山に火をつけ船内を巡って居ると怯える男たちが見えた。

「お、お前は…なんで此処に…というかエース様は！？」

「エース？彼なら自ら浄化したさ。君達も安心して私に身を委ねて？」


愛刀の中でもお気に入りとしている村正を召喚し、男らを切り裂いて行く。

「…次は支配の軛から逃れられると善いね。」

廊下に転がる者達にそう遺すと、視界の先にこの前の少年が現れた。


私の姿が彼を驚かせて仕舞った様だ。

「抜け出せた…のか？ってかAはどうした！？」

「皆、彼のことが気になるの？まァ教えてあげても善いよ。」

彼は急いで先ほどの部屋へ向かった。


「…っ、し、死んでる…のか？」

「あぁ。フェージャのシナリオ通りに罪から解き放たれたんだ。通信モニタと時計を壊して部屋の鍵穴にコルク詰めたら色々、考え込んでくれたみたいだったよ。」

脳裏にAの言葉が思い出される。異様に滑稽で今にも笑って仕舞そうだ。

「…罪とは思考、罪とは呼吸。」

「おや、お目当ては見つかった様だね。」

少年は状況を受け入れるのに必死なようだ。


「ではもう説明は不要だな。君にも浄化を施そう。」


そう云って刀を構えると彼は少し戸惑って、それから何かを受け入れたようだった。

「罪の軛より解き放たれ、魂の救われんことを…」

Be drowned→←trading　１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す