【文スト】新人って辛いよね。【男主】 (ページ19)

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先日、拾った兄妹は芥川と名乗った。

妹は身軽な身体能力を高く買われ、暗殺部隊へ引き抜かれた。

兄の方は約束通り、太宰の部下となった。

「おい、芥川。今日も訓練だとよ。」

太宰は芥川の育成に努めた。

芥川の異能は外套の影を操って攻撃するという能力―『羅生門』

異能無効化の太宰には当然、及ばなかったが着実に力を伸ばしていた。

「…太宰さんの指示か。了解だ。」

そして、此奴はあの太宰に尊敬の念を抱いている。

俺には理解できない感情だ。

暫くして、太宰が芥川の稽古場として設けている倉庫を覗くと懸命に攻撃する芥川の姿とそれをいとも簡単に避ける太宰の姿が見えた。

芥川の腹に太宰の強い蹴りが入る。

「…もっと攻撃を早めろ。立ち上がるまでのこの隙に殺されるぞ。」

太宰の冷徹な声に芥川の叫びが重なる。

俺は少し面白いことを閃き、目を見張った。

能力名を呟くと、目の前に太宰が現れた。

「…ふふ、おもしろい。」

太宰はかかってこいとでもいうように構えた。

俺は芥川の能力も駆使しながらナイフを構えて太宰の方へ駆けた。

異能無効化によって消される黒い影はフェイク。

俺の突きだしたナイフは太宰の肌を掠めた。

「相変わらず、思い切りの良い戦い方だね…まるで暗殺者だ。」

「これでも一応、切り裂き魔やってたんでな。」

そういえば、俺がマフィアに入ってから人を襲わなくなったことで世間はジャックは死んだと喜んだそうだ。

「はぁ…久しぶりの手合わせだしちゃんと決着がつくまでやろうか。」

俄然やる気という風な太宰。

「そんな余裕ぶってて大丈夫か？次は首狙うぜ。」

結局この日もまた、太宰に負けた。

「あ～あぁ…また俺の負けかよ。」

「貴様…また僕の身体を乗っ取って戦ったな…」

太宰との訓練で痣を作っている芥川を手当てしながら今日を振り返る。

「お前、また鳩尾殴られてんのか。こりゃァ痛そうだ。」

「っ…」

彼奴に異能の戦いで勝てる奴はきっといない。

それは彼奴の部下になってから理解した。

太宰に勝つ方法なんて存在するのだろうか。