たばこ、その後恋人失格【黄色】 (ページ3)

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出会いページ3

大学2年のクリスマス、とくに特別なイベントもなく授業を受けていつものように最寄駅に向かった。

今日だけは特別に、普段の駅前では聞いたことのない音色が響いていた。

路上ライブなんて素通りしてきた私だったけど

なぜかこのときだけは通りすがることはできなかった。

疲れ切った頭にその音色は心地よく、十数人がその歌声の主を囲む輪にゆっくりと私も入っていった。

一見怖そうな見た目の男性だった。

でも紡がれるのは優しい歌声と弦が擦れる音で、

私を惹き込むにはとても容易かった。

ぼーっと紡がれる音に身を任せて一点を見つめていると、曲が終わったのか立ち止まった人達は動き出した。

ありがとうございました
とお礼を言う彼と目があった。

少し目を見開いた後、マスクでわからない口元だけど、目の横にシワがよっていて私に微笑んだ。

一目惚れ、と言うやつか

その一瞬だけだったのに心がやけに騒がしくなった。

楽譜立てに立てかけられたスケッチブックには"ひかる"と書かれており、SNSのアカウントが表記されていた。

それから私は、授業が終わって駅に向かう途中彼の歌声が聞こえるたび立ち止まって聴くのが習慣になった。