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[第四章] 59.兄妹 ページ10





◇第四章◇





鬼の首が足元に落ちる。自分の振るった刀がそうさせた。首が断ち切れたお陰で砂煙のように散っていく鬼の体を、俺は最後まで見届けた事が無い。だからその砂がどうなるのか、鬼がその後どうなるのかを俺は知らない。それは今後も知る事はない。

「柱、そろそろ宿に戻って休みませんか」

部下達が口から出す言葉はさっきからそればかりで、もうこれだけ切った、これだけ倒した、貴方が一番だと俺に報告してくる。

「もうそんな時間か」

俺はその度に、あともう少しと返事をする。鬼殺隊に入って初めて鬼を殺した時から、毎日のように続けている。俺は刀を振り下ろす事を、強くなる事をやめない。それは大切なものを守る為すなわち自分の為だからだ。

俺が鬼殺隊に入る事はもはや必然と言えた。父が元々鬼殺隊に所属していたし、そんな父のことを尊敬していた。例に漏れず鬼殺隊に入り地道に柱まで登り詰め、鬼を切り、鬼を切り、そして今日に至る。

「Aさんが最終選別を終えたと、他の隊員から聞きましたよ」

宿までの帰路で部下にそう言われた。Aとは、俺の大切な妹の名だ。他の柱達からもAの活躍を聞いていた俺は「そうらしいな」とだけ返す。

「継子に選ばれた時は驚きましたけど、こんなにも早く最終選別とは凄いですね。流石、柱と同じ血が通っているだけあります」

「ああ…」

「お館様も一目置いているようですよ」

ある日お館様の口からAの名前が出た時、とうとう、その日が来てしまったかと思った。
鬼殺隊に入る為に家を出る事を決めた俺を、幼かった妹は泣いて止めた。行かないで死なないで、ずっと側に居てと。俺は泣き続ける彼女に「Aがこの世にいる限り、俺は死なない」と、その為に行くんだと慰めた。意味が分からないと余計に泣かれたけど、俺はこの言葉を意地でも有言実行してやると決めていた。
俺の大切な者達が鬼に奪われないように、そうさせない為に俺は生きる。これは俺の使命でもあった。

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- 更新頑張ってください!楽しみに読んでいます◎ (2020年11月1日 21時) (レス) id: ed14337de3 (このIDを非表示/違反報告)
カレー職人 - 猗窩座の小説なかなかなく、とても面白いです!需要なんて私にとってはありありです!是非、更新してほしいです! (2020年10月23日 0時) (レス) id: 1c0023d245 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - イトカワさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて、すごく嬉しいです。一人のキャラに絞ったお話なので需要が有るのか無いのか…と、模索しつつだったので反応頂けるととても頑張れます!これからも覗いていただければ幸いです。 (2020年4月22日 17時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - りんさんの文章がとっても好きです。軽妙なのにふざけてなくて、重すぎず硬すぎず、ずっと読んでいたい文章だな〜と思いました。 (2020年4月20日 23時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りん | 作成日時:2020年3月30日 0時

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