44.憎しみの果てに ページ45
利き手でない手で振った刀筋は酷く荒い。ニヤニヤと笑いその刃先を
「そんな雑な素振りが当たるか」
悲しみはいずれ怒りに変わり、怒りはいずれ底果てて虚無に変わる。そして虚無から鬼が生まれる。
「お前、変わった匂いがする。稀血か？」
何かを呟いた鬼。その眼の中には何か文字が刻み込まれている。なんだろう。多量失血したせいか視界が揺れてうまく字を読めない。
「稀血だ、稀血だ」
口角を上げて喜ぶ鬼の首を間髪入れずに狙った。スッと鬼の肌に刃が食い込むが浅い。もっと深くと思った瞬間、獣のような鋭い
「！！」
背後からしがみつかれ、頭を噛まれた鬼は
「クソ………っ」
低い声で唸った少女の首と体は、
「…凛之助！」
鬼の姿をした彼を捕まえようと手を差し伸べたあたしだったが、ぐらりと足元が揺れる。きっと血を流しすぎた。グルルと低く唸った彼はあたしから目を逸らし、洞窟から物凄い速さで立ち去っていく。
「待って…………！」
膝がガクガクと笑って、あたしの体は湿った岩の上に落ちた。
「止まって……」
自分の足元に血溜まりが出来ていく。視界がパチパチと白んできた。どうしよう…柱に伝えなきゃ、お館様にも。あたしの
立ち上がろうとするが足に力が入らない。噛まれた場所が熱を持ち、ぐずりと
「あの男は鬼を喰ってる」
不意に聞こえた声に頭を上げる。視界の先にある大きな気配、そして揺れるピンク色の髪。手指を小刻みに振るわせたあたしは笑った。
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作者名：りん | 作成日時：2020年1月25日 0時
