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17.向き不向き ページ18

殆どの鬼には主な拠点とした居住地が無いらしく、色々な場所を転々としているらしい。童磨のように人間に成りすまし過ごしているのは少数だと猗窩座から聞いた。

「火、綺麗だね」

人間が住まなくなった空き家のような場所に入り時間を過ごす。囲炉裏で燃える炎を眺めてあたしは呟いた。猗窩座は何も言わずに火を見てる。

「あたしは、自分が鬼になったのか覚えてないと言ったけど」

猗窩座は覚えてる?と彼に尋ねる。チラリとこちらを見た猗窩座。顔に炎の影がゆらゆらと移る。あたしが目を合わせると彼は視線を下に落とした。

「そんなもの覚えていない」

「きっと訳があるよ、猗窩座にも」

「ない。理由など後からいくらでも付く」

深堀しようとすると、彼はどうでもいい事だと吐き捨ててしまう。そしてまた部屋の中に静寂が訪れ、あたしは何ともいえずソワソワしてくる。我慢できず、懲りずにまた彼へ話しかけた。

「なんかドキドキして寝れないから昔の話とかしてよ」

「口と目閉じてろ。なら寝れる」

「面白い話でもいいよ」

「殴って寝かしつけてやろうか?」

怖い顔をした猗窩座から逃げるように、あたしは凄い速さで畳に寝転がって「おやすみ」と目を閉じる。
猗窩座って口は恐ろしく悪いが、きっと言うだけでそんな事したりしない。分かってるからこそ、イタズラしたくなるのかも。

ぱちぱちと、木が燃える音だけが部屋に響く。猗窩座は眠らないらしく、表情無く火を眺めている。彼はなぜ鬼になったかを教えてくれなかったけど、きっとそれは良くない理由なのだと思う。だって猗窩座は鬼に向いてない。鬼殺隊を見逃す彼の感情は鬼らしく無い。

「…もし、どうしても鬼をやめたいと思ったらどうすればいい?」

小さくボヤいたあたしに、彼はまだ寝ないかといったような面倒臭そうな顔をした。だけど少しばかり黙り込んだ後、ゆっくりと口を開く。

「鬼は皆、陽を浴びると消滅する」

そう言った後、ふっと何かを思い出したかのようにあたしのことを見た彼。

「だがお前は死なない」

「浴びるも何も…ずっと太陽の下にいたよ」

そう言うと、彼は目を細めてあたしを凝視する。そして何かを考え込むように沈黙し「だから無惨様は」と推測するかのように呟いた。

「無惨様が何?」

聞いても、猗窩座は答えてくれない。唇を尖らせたあたしは、もういいやと目を閉じる。そこまで気にもならないし、なんだか眠たくなってきた。
その晩に見た夢は、おほろげで記憶が確かでない誰かが、あたしにニッコリと笑う夢だった。

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作者名:りん | 作成日時:2020年1月25日 0時

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