鬼の弱み #不死川実弥 ページ7
風柱の不死川実弥は怖い。名前からして怖い。顔も怖い。暴言を吐くとこも、すぐに手が出るとこも、太刀筋でさえも怖い。不死川実弥が怖い、ひたすら。
あたしがやっとの思いで剣士になって、鬼殺隊に所属し初めて思ったのはもはやそれだけ。
「泣くな!喚くな!怯むな!殺されたくなければ殺せ!お前らは黙ってただひたすら剣を振れ!!」
稽古中に不死川さんが必ずといっていいほど口に出す「殺されたくなければ」は、あたしにとっては"鬼に"では"俺に"だとしか思えなかった。辛いと一言でも漏らせば暴言が飛ぶし、地に膝を着けば刀の柄でしばかれる。修行での傷よりも、不死川さんから受ける傷の方が多いぐらいだった。
「もうやめたい」
四日目であたしは、もはやそれしか言わなくなっていた。同期の剣士達も「こわい」しか言わなくなっていて、五日目で「死ぬ」としか話せなくなって、六日経ったらもう喋る事をしなくなった。そして七日目で来なくなる。
「なんであたしは鬼殺隊に入ったのでしょうね」
寿命が短くても二年程縮んだであろう一週間を終えて、屋敷の廊下にて一人自問自答。同期は半分以上の剣士が辞めてしまい、女の子なんてもうあたしぐらいしか残っていないのではと思った。
「あんなにおっかない鬼みたいな先輩がいるって知ってたら、あたしは絶対鬼殺隊になんて…」
ブツブツ言いながら廊下を歩いていれば、前から歩いていた人と肩がドンとぶつかった。あっ、と思って顔を上げる。その瞬間、謝罪の言葉はあたしの口からは出ず喉元でグッと止まった。
「いてぇな。どこ見て歩いてんだ」
目の前には目尻の吊り上がった不死川さんが立っていた。
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作者名:りん | 作成日時:2019年8月19日 13時