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それはあまりにも予想外の展開だった。気の強い彼女の事だ、俺が行けばきっと倍にブン殴るぐらいしてくるだろうと思っていたけど違ったのだ。
「ほんとに私じゃないもん…」
訴えるように言ったAの丸い瞳が涙で揺れる。サーっと背中が冷たくなって、俺は慌てて彼女から手を離す。Aから距離を取り、犯人は違うやつだと確信した俺は光の速さで土下座して謝った。
「ごめん!」
「…………」
「確認しないで君に詰め寄った俺が悪かった!」
目を赤くした彼女はじっとりとした視線で俺を見る。俺は必死になって、
「許してくれるなら何でもいうこと聞くから…」
「ほんとうに?なんでも?」
彼女の言葉に何度も頭を縦に振った。
「絶対。約束する」
「なら許す」
浅く頷いた彼女に、俺は全力で安堵した。普段気の強い女の子の涙がこんなにも効力を示すなんて。そう思いつつも、さて何を言われるのかなと土下座から顔を上げれば彼女はニッコリと笑って言った。
「金平糖、食べたの私。怒らないでね」
星が飛びそうなウインク混じりのその台詞。途端に自分の喉から、キーーーーーーッ!と、黒板を爪で削った時みたいに高い声が出た。高く振り上げた両手を、畳の上に思いきり振り下ろして叫ぶ。
「あァ!なんだよほんとに!!」
「なんでも聞くって君が言ったでしょ?怒らないでよ」
「どうしてそんな嫌がらせするんだよ!俺にばっかり!しかも短期集中狙い!もはや怖い!!」
「別に。面白いから」
「クソーーーーーーーー!!!!」
もうこんな女イヤだ!禰豆子ちゃん!ねずこちゃん!ネズコチャン!呪文のように喚けば、その隙間で彼女が小さくぼやいた。
「好きな子ほど虐めたくなるじゃん」
咄嗟に振り向いた俺に、悪戯っ子みたく笑った彼女。
「馬鹿には分からないかな」
そう言って俺から視線を逸らしたA。彼女のいう通りバカな俺は、それから二週間ぐらいまともにAの顔を見れなかった。
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作者名:りん | 作成日時:2019年8月19日 13時