オレノコトダケヲ #童磨 ページ48
Aは可愛い、そして俺の信者である。彼女は俺を崇拝している。それに俺のことが好きだ。俺が好きで、俺のいうことならなんでも聞く。俺のやることならなんでも素敵だと言う。その端正で整った顔で、俺を優しくて慈愛に満ちて素晴らしい人ねと微笑む。彼女の心は綺麗で、俺の心までせせらぎに流れて澄んでいくようだった。
悪くないと思った。だから殺さず、死ぬまで側に置いておこうと思ってた。なのに。
「前々から、随分と前から私は思っていたのです」
俺の部屋に来たAが、やけに怖い顔をしてポツリと言った。いつも笑顔なのに珍しいと思いつつも、俺は彼女の言いたいことがすぐにわかった。だが素知らぬフリをして「なにかな」と尋ねた。彼女は強張った表情のまま俺を見る。
「信仰者を………」
彼女の心臓が、凄い速さでドクドクと脈を打っている。体内から取り出さずとも、それが手に取るようにわかる。彼女は俺を怖がっている、俺に怯えている。俺の目は彼女を捉えて離さない。
「童磨様は…信者達を」
「嗚呼、少し待って」
ふっと彼女の言葉を止めた。途端にAの顔が強張ったが、棒立ちで停止する彼女に俺は聞く。
「それを俺に言って、どうして欲しい?」
「え……」
「やめてと言う?信者達にバラす?外の人間に漏らす?それともここから逃げ出したい、かな?」
「……………」
俺のことを裏切るか、と最後に聞いた。彼女の意志の強そうな瞳が俺を見つめる。次に何を言うのかと、俺は彼女の返答を少しばかり弾んだ気持ちで待った。返事次第で即座に殺してやろうと思っていた。すると彼女は視線を下に落として呟く。
「私は…真実を知っているかもしれません」
ポツリと言ったA。怯えの中に混じっているこれは本音なのか。読み取れなかった俺は首を傾げて扇を揺らす。
「ならその真実とやらを聞こう。こちらへおいで」
「私のことも殺すのですか」
「うぅん、どうしてやろうかな」
「…殺すのならこれだけ聞かせてください。私の婚約者は、1ヶ月前から行方不明です」
「その聞き方、俺が喰ったとでも言うのかい」
「私には分かりません。だから聞いたのです」
淡々と言うAからは怒りを感じられない。だからといって悲しそうな訳でもないし、奇妙な感じだった。
「いいから早くおいで」
「喰ってしまうのなら、その代わり本当の事を聞かせてください」
彼女の瞳は妙なぐらいに頑なだ。いつもならこんな些細なことなど気にもしないはずなのに。俺は溜息を吐いた。
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作者名:りん | 作成日時:2019年8月19日 13時