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凄まじい勢いで保健室のドアを開けたが、部屋には誰もいない。
「なんで誰もいないの!あたし指に穴空いたのに!」
もういいなんて、一人だけの教室にて叫んだ。部屋に並ぶ戸棚から消毒液っぽいものを適当に選びサッと付けて、指のサイズに合っていない絆創膏を巻き付け、大した病気もしていないのに当たり前かのようにベッドに飛び込んだ。
「もう教室になんて戻ってやんない…」
静かな部屋に鳴り響く時計の音を聞きながら、あたしは腕で顔をおおう。
どうして、こんなにも可愛くないことしか出来ないのだろう。
彼の前だけでは、もっともっと可愛くいたいし、素直になりたいって思うのに。考えていることと行動がなかなか一致してくれない。
「…絶対嫌われた」
ポツリと呟いた言葉が胸に突き刺さる。痛すぎて泣きそう。自分で自分にトドメ刺してどうするのって、天井を見上げた時、ガラッと扉を開ける音がした。カーテンの向こう側に人影が見える。
「……」
誰か来た。
コツコツと音を立ててこちらへ来る。あたしはゆっくりとベッドから起き上がり、その人影を目で追った。
「………だれ?」
揺れる影はどんどんこちらに近づいてくる。
「…煉獄先生?」
返事はなく、その代わりにシャッとカーテンを開く手。あたしの心臓は高鳴る。
「A」
だが、そこに居たのは炭治郎。
「はぁーーーーー…」
大きな溜息と共にあたしはベッドに倒れ込んだ。炭治郎には失礼だが、期待外れにも程がある。なんで煉獄先生じゃないの。
「大丈夫かい?」
ベッドにうずくまるあたしを不安そうな声で呼んだ炭治郎へ、何でもないとだけ返した。
「炭治郎が来ると思わなかったからビックリしたの」
「煉獄先生が見て来いって言うから来たんだよ」
「え?」
「これ、言うなって言われたんだけど」
炭治郎の言葉にあたしは思わずふふと笑った。
「素直じゃないな…」
「ん?」
あたしの小さな呟きを聞き返した炭治郎に、なんでもないと微笑んだあたしはベッドから飛び降りた。
「わざわざ来てくれてありがとう、教室戻ろ!」
不器用なのはあたしだけじゃなくて、先生も同じ。そう思うだけでちょっとは近づけた気がしなくもない。
実際、教室に戻った時に一番驚いた顔をしてたのは煉獄先生だったんだもん。
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作者名:りん | 作成日時:2019年8月19日 13時