素直じゃなくても可愛いと言って #煉獄杏寿郎 ページ33
# 学パロ
コツコツと教室に響くのはチョークの音だけで、みんなは真面目に授業を受けている。煉獄先生が黒板に書いた文字を一字一句間違えないでノートに写しているんだろう。そう、あたしを除いて。
同じテンポで聞こえていたと思えば、少し早くなったり遅くなったりと、忙しない音に眉をひそめる。
「……」
授業の始まりから一握りもしなかった鉛筆を欠伸と共にコロコロと転がした。先生の授業はとてつもないぐらい退屈で、それぐらいしかすることがない。
「……」
「じゃあこの問題各自で解くように!そんなに難しくないぞ!」
前から順に、プリントが配られる。あたしの前からその紙をもらい、後ろの玄弥に渡した。あたしは早速プリントに、答えどころか落書きを始める。
「A!」
真上から声がした。顔を上げると、そこには笑顔の煉獄先生が居てあたしは上げた視線を直ぐに下に降ろす。
「そのプリントは落書き用に渡したんじゃないぞ!」
「…貰ったんだもん。これはもうあたしの。だからどうしたっていいじゃん」
それだけ言って、あたしはまたペンを走らせる。プリントにスラスラと書くのは犬とか猫とか、別に意識して書くようなものではなくどうでもいいものばかり。
「美術の時間じゃないんだ!」
「知ってるもん」
唇を尖らせて彼から顔を背けていれば、隣にいた善逸があたしをペンで突いてくる。なんだと横を見ればニヤニヤした善逸がそこに居て、あたしは眉間に皺を寄せた。
「…なに」
「分かりにくいんだよ、Aって」
「なにが」
「煉獄先生に構ってほしいなら、そう言えばいいのに」
「!!」
目を丸くしたあたしに、煉獄先生はなるほどみたいな顔をする。持っていたペンを指で折り曲げそうな勢いで握れば、あたしは慌てて先生を見上げた。
「何言ってんの!違うから!なにその、そういう事かぁ…みたいな顔!」
煉獄先生のなんだか色気のある流し目を指差せば、微かに動いた彼の瞳があたしを捉えた。
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作者名:りん | 作成日時:2019年8月19日 13時