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○後藤(隠)side
→君はとても目に余るの続き
俺は最近、密かに推理している。霞柱はAの事が好きなのではないかと。これといった理由は無いけど、気になるのは時透無一郎の感情。無一郎という名前の通り、彼は基本的に無。でもAが関わると彼は不思議なぐらい感情を表に出すようになる。元隊員である彼女には出しやすいのか、それとも。
「炭治郎くーん!」
鬼狩りから戻った炭治郎の元へ、いつも通り一番に駆け寄るA。そしてその後ろにいた霞柱に彼女はグッと親指を立てる。
「時透くんもお疲れ様でした!手当ては後藤さんがしてくれます!」
柱よりもその下の剣士を優遇する隊員など彼女以外にいない。ドーンと押し切るようなAの笑顔。一瞬怪訝な表情をした霞柱だったが、すぐに持ち直しその場を後にする。
「炭治郎くんは強くて優しくてかっこいいね」
邸へ戻っても炭治郎の元から離れないAに、俺はやれやれと言った風に声を掛けた。
「炭治郎は一応お前の先輩なんだから敬えよ」
炭治郎もAもきっと年は近い。だけど隠になったばかりの彼女から見れば炭治郎は先輩だ。俺の言葉にしぶしぶといった様子で頷いたAだが、炭治郎は首を左右に振る。
「構わないです。褒められるのは気恥ずかしいけど、やっぱり嬉しいから」
キューン!途端に心臓へハートの矢が刺さったみたいに「うふふ」と身体を捩らせるA。分かりやすいなと思いつつも、もはや呆れた俺は何も言わないことにした。そんな俺を尻目に炭治郎は続けて言う。
「Aさんは目の離せない妹のようなものだから」
ガーン!次はハートを割るための弓矢が彼女の心臓へ飛んだ。話の流れで発した炭治郎の言葉にAが露骨に傷付いた顔をしている。これだから鈍感な男は…と思っていれば、重ねるように言葉を吐いたのは隣で治療を受けていた霞柱だった。
「俺はこんなのが妹なんて嫌だな」
ポツリと呟いた霞柱に、Aは炭治郎から受けたショックを押しのけるように「意地悪!」と強気で言い返す。まるで好きな女の子の気を引くためにからかうような霞柱の言葉。優しさとも取れるその言葉は、彼女にはどう映るのか。
「時透くんはあたしが剣士だった時から、ずっとこんなこと言うんだよ」
ぷりぷりと頬を膨らませる彼女の表情は、イヤなことを言われた割に穏やかだ。俺はそんな二人が実はお似合いなんじゃなかと感じる。第三者の目線も地味に楽しいので、これから気長に待とうと俺は密かに彼等を思う。
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作者名:りん | 作成日時:2019年8月19日 13時