遊び歩く言う間も無くずっと【鬼滅の刃】 (ページ27)

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「おーい」

俯いたままの玄弥の身体を軽く揺らす。

「…ほんとに大丈夫？」

意識はあるのかと尋ねるが、やはり何も言わない。不安になったあたしは彼の顔を覗き込んだ。

「玄弥、気持ち悪いの？」

「………………」

「あたし一人じゃ運べないから人呼んでこようか？」

離れようとしたその瞬間、ふっと虚な目でこちらを見た彼。

「うるせぇな…」

いつものトーンだ。低い声が鼓膜を揺らし、途端にあたしは顔を引いた。視線を落とせば、はだけた着物の隙間からチラリと覗いた彼の鎖骨が見える。

「だって、返事しないから」

不安になってと言いかけたあたしの二の腕を、彼がグッと掴んできた。あたしは驚いて彼の顔を見る。

「……なに」

こちらをじっとりと見つめる玄弥。睨まれる以外で彼とここまで目を合わせることなんて無くて、体温が上昇していく感じに焦った。あたしの心の奥を探るように、彼はあたしの顔を見る。
そして徐々に距離を詰めて来る彼。恥ずかしさに咄嗟に目を逸らす。

「ここでそれは、やばいって」

ここでは何なのだ。自分の口から出た言葉に思わずツッコミたくなる。だけど彼は止まる素振りすら見せずに片方の手を地面についた。
彼の肩を押し返して拒否しつつも、視線は勝手に玄弥の唇へ向かう。うつらな瞳があたしを捕らえ、彼からはアルコールと石鹸とが混じったみたいな不思議な香りがした。

「嘘でしょ、本当に待って…！」

大人の仲間入りしちゃう、とか思ったその瞬間、ふっと彼があたしの方に倒れてきた。不意な重みに体が後ろに傾く。これはヤバいこれは普通にヤバい！神様仏様！と顔をこわばらせたあたしだったが、玄弥は倒れ込んだまま人形のように動かなくなった。

「？」

拍子抜けしたあたしは目を開けて彼を見下ろす。すると熱い塊の奥から小さな寝息が聞こえてきた。まさか寝てる？

「…………なんなの」

全身に力を込めていたらしい、一気に脱力したあたし。肩の上に乗っかっていた玄弥を退けて、雑に髪の毛を掻き上げながら深い溜息を吐いた。何を期待していたんだろう、なんだか馬鹿馬鹿しい。そう思いながらも、小さな子みたく膝でスヤスヤと眠る彼を眺める。

「…期待させんなよ」

そう呟いて、彼の頬を小さく撫でた。やっぱり可愛い、怒るに怒れない。それに夜はまだ長いのだ。もう少しこうしていようと、あたしは彼と同じように目を閉じた。