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「俺は俺が、間違ってるとは思わない」
力無く言葉を吐いた彼。珍しく不死川さんが叫ばない。滅多にない光景にあたしは思わず「分かってます」と彼の意見に同調する。
「あたしも同じものを乗り越えたし、文句が言いたいわけじゃないです」
だけど。
「不死川さんが怖いって言われて」
後輩達が寄り付かなくなるのは。
「そういうのは、あたし」
絶対嫌だ。あたしは彼の良いところをいっぱい知ってるし、複数いる鬼殺隊の柱の中から彼を慕うのも不死川さんがよかったからだ。それをみんなが知らないまま辞めていくのは府に落ちない。だからあたしはそう思うだけなのに、それをうまく伝えられない。
「あたしはもっと沢山の事を剣士達に経験して欲しいから…」
あたしを見つめたまま、不死川さんは何も言わない。そもそも何かが返ってくることを期待していた訳ではない。
「でも勘違いしないで下さい。あたし別に、不死川さんに変わって欲しいって言ってる訳じゃないから。そのままで居て下さい」
彼の顔を見ずに、失礼しましたと部屋を出た。
そして思わず顔を両手で覆いたくなった。なに今の、そのままで居てって、もはや告白じゃん。あれ以上一緒に居ると、また良からぬ事を言ってしまいそうだったから出てきて正解だった。
さっきは慕っているなんて綺麗な言い方をしたけど、本当は彼のこと異性として好きなんだと思う。だけど片思いなのは分かってたし、なんなら彼に一線超えた関係なんて求めてない。
でも時たま我慢してた感情が出そうになって、その度不器用に相手に絡んで言い合いになるだけ。なんだか子供っぽいし、もうそういうのやめようと思った時、ふっとあたしは自分の羽織を屋敷に忘れていることに気付いた。
「あぁ…最悪」
少し悩んだが、羽織のポケットに
「いつも通りでいこう」
ブツブツと呟きながら廊下をいく。歩きながら、よくこの辺で不死川さんの弟である玄弥君とすれ違っていた事を思い出した。彼は弟なのに、いつもお兄さんの部屋に訪問する事を躊躇っていた。彼のことは知らないけど、前科がありそうな風貌とか不死川さんによく似た雰囲気をしてた。最近見ないなとか思いつつも、彼の部屋の前で立ち止まる。
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作者名:りん | 作成日時:2019年8月19日 13時