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素直な彼女の言動に、炭治郎は照れくさそうに笑う。
「俺は自分のことをかっこいいって思ったことはないよ」
「あ、そういうとこも好き」
ハッキリとそう告げるA。突然の告白に炭治郎は微かに赤面して気まずそうに俯く。それを見ていたAと同じ事後処理部隊の後藤が、制するように彼女に言った。
「A。炭治郎は一応お前の先輩なんだから、きちんと敬えよ」
決して間違ってはいない後藤の言葉に「分かってます」としぶしぶ頷いたAだが、炭治郎は頭を左右に振る。
「構わないです。褒められるのは気恥ずかしいけど、やっぱり嬉しいから」
にっこりと笑った炭治郎に、キューンと高めの効果音が出そうなぐらいキラキラとした目で彼を見たA。ここまで来るともはや殴られても上がりそうな、彼女の炭治郎への好感度に俺は溜息を吐く。そして笑顔の炭治郎は続けた。
「それに、Aさんは目の離せない妹のようなものだから」
「えっ」
途端に部屋に響く間の抜けた声と、妹認定を受けてあからさまにショックを受けているAの顔。それに炭治郎が気付くはずも無く、苦虫を噛み潰したような表情のまま彼女は口を開いた。
「…でも、あたしは、」
何かを言いかけたA。それを阻止して俺は口を挟む。
「俺はこんなのが妹なんて嫌だな」
その台詞にAの視線が炭治郎から俺に向き、怒った顔でこちらを指差したA。
「あたしだって時透くんの妹は嫌です!いつも意地悪だから!」
「こちらから願い下げだね」
シッシッと虫をはらうように手を動かせば、Aは眉をひそめて炭治郎に向き直る。
「炭治郎くん聞いた?この人いっつもこうなんだよ」
「君と同じで思った事をそのまま言ってるだけだ」
「可愛くない人だよね〜」
「そっくりそのまま返すよ」
この勢いでヒートアップしそうな俺達を困った顔で宥める炭治郎だが、こんなものはいつもの事だ。
剣士の頃からそうだった。Aが傷つきそうになれば俺が奮い立たせる。それがどんな方法でも、彼女に暗い顔は似合わないと思うから。
炭治郎しか見えない彼女のままでは、きっと俺の気持ちには気付かない。それでもいい。今Aに言えるのは、俺が君の事を「妹としてなど見ていない」ということ、それだけだ。
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作者名:りん | 作成日時:2019年8月19日 13時