思わせぶり #竈門炭治郎 ページ13
炭治郎は基本的に人との距離感がバグっている。とにかく近い。色んな意味で言うと伊之助や善逸も近かったりするけど、それとはまた別。炭治郎はナチュラルに近いのだ。それはなんというか、子供の頃の子供同士の距離感みたいな。如何わしい気持ちが微塵も無い、あの不思議な距離感。
「A、髪に何かついているよ」
ふっと伸びてきた彼の手に、あたしは瞼を微かに閉じる。視界の前で動く骨張った炭治郎の指。あたしの髪にツーッと触れ、そして直ぐに離れた。
「取れた」
ニッコリと笑った炭治郎。無邪気な笑顔の彼があまりにも真っ直ぐこちらを見つめるので、咄嗟に視線を横にやる。
「ありがとう」
「ああ。お構いなく」
「炭治郎さ」
「ん?」
疎らに赤の混じった、丸い瞳をじっと見る。それも穴が開くぐらい見るけど、彼は逸らすどころか「何かのゲーム?」とあたしの目を見返してきた。天然なのか、養殖なのか、あたしは目を細める。
「いや。ゲームじゃない」
「あれ、そうなんだ」
「ずっと思ってたんだけどさ、近くない?」
「えっ」
言われてやっと気づいたのか、彼は少しだけあたしから距離を取る。
「すまない。近かったか」
「よく言われるでしょ」
「どうだろう、あったかな」
「女の子が勘違いするからやめたほうがいいよ」
「えっっ!」
今度の炭治郎の驚きは、先程と比べて大きな反応だった。顔を赤く染めた彼は「そんなつもりはないよ」と慌てた様子で首を左右に振る。
「知ってる。分かってるよ」
「俺はただ」
「そういうの天然タラシっていうんだよ」
「本当に他意は無いんだよ」
嘘はつかない、俺の目を見てくれ。と、あたしを見つめる彼。そういうとこなんだけどと言いたい所だが、落ち着きを取り戻しつつあたしは言う。
「じゃあ、目閉じて」
「え、どうして?」
尋ねつつも、素直に瞼を閉じる炭治郎。そういうところ、可愛くて好きだなぁと思いながらあたしは彼の近くに寄る。
73人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りん | 作成日時:2019年8月19日 13時