付き合っている気でいる彼氏と片想いだと思い込んでいる彼女。【エース・トラッポラ】

file.36 主人公 ページ39

『……んん…』






目が覚めると、見慣れない天井。






………ここは、病院…？






なんとか上半身を起こすと、そこにはエースが
すやすやと寝ていた。






『……エース？』






「…ん、んん……？」





エースはゆっくり目を開ける。とすぐに
目を全開に見開いた。






「監督生！」






『あれ…私、ここって…』






「あ、ちょっと待ってて。
あとでちゃんと説明すっから」





そう言ってエースはナースコールを押すと、
すぐに看護師さんと医師が部屋に入ってきて、
軽く診察をされたあと、部屋を出ていった。





どうやら大きな問題はなく、
擦り傷などの軽傷で済んだらしい。







「…1人にしてほんとごめん。
俺が傍についてたらこんなことにならなかったのに…
アズール先輩から電話がかかってこなかったら、
お前は今頃…」







エースが責任を感じてるのか、
下を向いたまま私の方を見ない。
私はそっとエースの手をとった。







『大丈夫だよ、アズール先輩たちが来てくれたお陰で
そんな大したことされなかったし！』






キスしか……と言いかけたとき、
ぐっと言葉を飲み込んだ。








……そうだ。
そういえばガラの悪い男の1人に強引にキスされて…








「……そういや、あの4人組はアズール先輩たちが
警察と学校に報告したから。
いま事情聴取されてるとこ。
さっき学園長も来てたし」






そうなんだ…改めてアズール先輩には
お礼をしに行かないと…
あと、逆探知してくれたイデア先輩にも。



でも逆探知って一般人がやると
犯罪になるはずだけど…ま、いいか。








『そうなんだ…エースも、
そばに居てくれてありがとう』






「……ほんとマジで心臓止まるかと思ったんだからな…心配させんなバカ」







エースは、いつもの意地悪な態度とは程遠く
気弱な声で、優しく私を抱きしめた。







『大げさだなぁ、死ぬわけじゃあるまいし』







「お前が死んだら俺が困るっつーの…」







『え？なんか言った？』







「…んー………なあ監督生」







『ん？なに？』









「キス、したい」

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