-10- ページ10
*
喩えるなら、綺麗な鳥が澄みわたった空気の中で鳴いているかのような。透明な透き通った声だ。
浦田さんの声ももちろん綺麗なのだけど、この人は透明で美しい、といった印象。
「……ん、うらたん、後ろの人誰なんですか？」
「新しく入ってきた使用人だよ。ほらA来て」
「……はい、失礼します」
謎の威圧感からか、部屋の境目で止まってしまっていた足を浦田さんの声でやっと動かした。
部屋に入った瞬間、爽やかな柑橘系を連想させるものが香ってきて少しくらりとする。上品なのに、何処か切ない香りだ。
まるで神域みたい。縄張の中に入るだけでこんなにも緊張してしまう。浦田さんの部屋もこんな感じなのかな。
「初めまして、新しく使用人になりました、Aと申します」
中で座っていた部屋主様は、一言で表すと『檸檬色』だった。左右不対称な左側に垂れた髪が肩に程よくかかっていて艶やかだ。浦田さんと同じく美少年で此処には顔立ちが綺麗な人しかいないのか、と錯覚してしまいそうになる。
「……A、大丈夫？ぼーっとしてるけど」
「あ、はい。大丈夫です」
「じゃ、俺いなくなるね。今日客入ってて、お迎えしないと」
「……え」
生々しい事情を聞いてしまい、表情が引き攣る。それをどう勘違いしたのか、浦田さんが近くに寄ってきた。
「あーごめん。寂しいかもだけど、そんな顔しないで、ね？ちょっとの間、センラで我慢してて？」
「センラで我慢ってどーいうことですかー」
「センラうるさい。……で、A。明日まで我慢できる？」
「……はい」
また愛したい欲が出たのかな。取り敢えず話を合わせた。
「じゃあねA、センラ」
「ばいばい、うらたん」
「……また今度」
……さて、この緊張感は今日で二回目だ。喉を鳴らす。
「……初めまして」
「君はもう挨拶してくれたでしょう？あ、でも僕はまだしてなかったね。失礼でした」
座って、と促された。緊張気味に座り込む。ニコリと微笑まれても何故か緊張はほどけなかった。
「僕はセンラと申します。陰間……っていうことは、うらたんから聞いたよね」
「はい、存じ上げております」
「そんな堅苦しくなくてもいいんですよ？」
「いえいえ、陰間様ですので」
「けれどうらたんにはほどけてたじゃない」
その言葉に、私はハッと床に下ろしていた視線をあげる。センラさんの視線は、私を真っ直ぐ射抜いていた。
……何で、分かったの。貴方と対応は同じ筈だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1456人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
響 - めちゃめちゃ好きです！よかったら続きお願いします✨ (2022年5月23日 21時) (
レス) id: c19490a4d5 (このIDを非表示/違反報告)
甘党ミカン - 4人とのやり取りにニヤニヤしてました((どうでもいいかもですけど笑ってるけど目元が笑ってない怒り方ってなんか怖いですよね(自分だけかも)最近､花魁等にはまってるのでこういう作品をありがとうございます(*´▽｀*)更新頑張って下さい! (2020年9月25日 2時) (レス) id: 8dcda58632 (このIDを非表示/違反報告)
絵怜音(プロフ) - のこさん» コメントありがとうございます！いやいや、私も書きながらニヤニヤしてるので！いや寧ろ、カオナシみたいに語彙をなくしているので！多分私の方が気持ち悪い……です！のこさんこそ、コロナにお気を付けてくださいね。コメントありがとうございました！ (2020年5月13日 6時) (レス) id: d5db198697 (このIDを非表示/違反報告)
のこ - 更新お疲れ様です！とても面白かったです！！urtさんサイド最高です！一人で2828してました！！(キモいですよね…)更新頑張ってください！コロナウィルスにも気おつけてくださいね。コメント失礼しました！ (2020年5月11日 21時) (レス) id: e0ede7313f (このIDを非表示/違反報告)
絵怜音(プロフ) - ゆりま(ゆきな)さん» コメントありがとうございます！花や、花良いですよねー！私も好きです！面白かったですか！嬉しいです！更新頑張ります！ (2020年5月9日 9時) (レス) id: d5db198697 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：絵怜音 | 作成日時：2020年4月4日 18時
