どうでもよくなる ページ11
『いやな夢』
たまに、夢に見る。いかに自分が弱くて情けないかを実感させられるもの。強くて優しいあの人が、亡くなる夢。
現実との区別がつかなくなったらもう終わり。たちまちに動けなくなってしまうだろう。頬を抓りようやく体を起こすことができるのだ。
煉獄さん。私の、私にとって大切な人。
だからこそ夢にでてきてしまうのでしょう。慣れさせるように、刷り込ませるように。嫌な気分だ。無意識下に彼の死を想像してしまうなんて。彼が強いのはわかっている。ただ、最大の長所でもある優しさが身を滅ぼしやしないか。
私は、あなたが生きてさえいればなんでもいいんです。
悲しそうな顔でこちらを向く言葉は、とても彼には言わせてはいけないものなので目を閉じた。
暗い気持ちなのは今日までだ。明日からはまたいつものように振る舞おう。知ってますか? 感情って意外と閉じ込められるものなんですよ。
それがたとえ、辛いものだとしても。
『煉獄さん、おはようございます!!』
「おはようAさん!! 朝から元気でなによりだ!」
『もちろんです。覚えてますよね、今日は一緒に昼食をとる約束ですから!』
「ああ覚えている! 俺に二言はない!」
わざわざ時間を取ってくれる優しさについ甘えてしまう。煉獄さんを尊敬している人はそれこそ星の数ほどいるのに無礼にも無駄をさせてしまっているのは私だけだ。他の隊士は柱が忙しいのを理解しているから。
私だけが特別ならよかった。ちゃんとした身分で彼に見合う人生を送れていれば。そんなたくさんのもしもが溢れてしまうからタチが悪い。
聞こえないふりをした言葉がいつも反芻する。
それだけでもう、なんでもいいか。
「君のために生きられればどれだけよかっただろうか」
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作者名:ココさん | 作成日時:2019年11月19日 0時