第三十二話 ページ34
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弓をもう一度引く決心をして、
部活に来たものの束の間、
部内には不穏な空気が漂っていた。
「俺は団体戦には出ねぇよ」
小野木の言葉に、たった今場を和ませた如月の
努力は消え去った。
「鳴宮を仲間と認めたつもりねぇし」
「認められるなんて思っていないよ。
ここで弓を引かせてくれ」
あれだけもう弓は引かないって言った自分を
そう簡単に仲間だと思ってもらえるとは
思わない。
小野木は特に弓道に関しては人より何倍にも
本気だから、俺のことが気に入らないのも
知っている。
「俺は言うことをころころ変える奴が
一番嫌いなんだ。
五人目としてもこの弓道の部員としても
絶対ぇ認めねえからなっ」
強い口調で言いかかってくる。
「あの橘って奴も、俺を言い訳にして
どうせすぐに辞めるに決まってる。
……逃げねぇって自分から言ってきたくせに、
部活に来ねぇとか矛盾してんだよっ」
「小野木、それは違っ──」
静弥が小野木の言葉をさえぎろうとした時、
ギィッと床が鳴る音と、
何か物がガサッと落ちる音がした。
振り返ってみれば先生に呼び止めらていた
Aが戻って来ていた。
でも、先程までの様子とは全く違った。
「なんだよ、やっと来たのか。
てっきり逃げ出したのかと思った……って」
小野木が言葉を失ったのもその筈。
「……ごめんね」
今にも消えそうなか細い声で、
彼女の頰は涙でぬれていた。
色素の薄い大きな青目は涙を溜めれば
耐えきれずに頬を伝っていく。
「……っ」
「Aっ!!」
出て行ったAの後を追うように
静弥も出て行った。
「かっちゃん、今のはちょっと違うんじゃない?」
「違ぇよ、そんなつもりじゃ……クソッ……」
Aがどうして泣いていたのか、
それは静弥が戻って来てから知ることになった。
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千花(プロフ) - ぴぴるぴーさん» 素敵なコメントありがとうございます!新年早々既に風邪を引いてしまいましたが、頑張りたいと思います。愁くんのお話もそのうち更新していけたらと思っております。どうぞ今後とも宜しくお願い致します! (2019年1月1日 8時) (レス) id: a0bb3f43ee (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴるぴー(プロフ) - 本当に素敵なお話で!もう、きゅんきゅんしながら読ませていただいています!愁君のお話もです!お体に気をつけて、更新頑張ってください。楽しみに待ってます! (2019年1月1日 6時) (レス) id: cd72a96e39 (このIDを非表示/違反報告)
千花(プロフ) - Tao音さん» こんばんは。温かいコメントありがとうございます。そう言っていただけて本当に嬉しいです!頑張って更新を続けてたいと思いますので、宜しくお願い致します。 (2018年12月25日 23時) (レス) id: a0bb3f43ee (このIDを非表示/違反報告)
千花(プロフ) - 終夜さん» こんにちは。いつもありがとうございます。私自身このようなことは初めてでとても吃驚しましたし残念に思いました。私よりも文才がきっとある方だと思いますので、ご自身の作品を大切にしてほしいと思いますね…… (2018年12月20日 12時) (レス) id: a0bb3f43ee (このIDを非表示/違反報告)
終夜(プロフ) - え、盗作?とうさく?トウサク?とても悪い行為ですが、それほど、千花さんの語彙力が羨ましかったのでしょうね。とてもお辛いと思いますが、お気を休めて下さい! (2018年12月19日 22時) (レス) id: 7fadf68605 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千花 | 作成日時:2018年11月17日 22時