夏も海も空も (ページ9)

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「由紀子さんみたいに健ちゃん♡って呼んでくれてもええねんで！」

「......こじけんで。」

「ちぇ〜、つまらんの。」

「あの...ここの人たちは皆さんそんな感じなんですか？距離が近いっていうか...」

「あ〜なるほどなぁ。

まぁ小さい町やからなぁ。

みんな子供の頃から近所の世話になってるし、お互い様って風潮はあるなぁ。」

都会で生まれ育ったわたしはこの町の雰囲気に馴染むのにまだまだ時間がかかりそう

「Aちゃんせっかくやからコーヒーくらい飲んでいってや。このお礼に奢るで。」

そう言ってうれしそうにトマトを両手に抱えている

「え！そんな大丈夫ですよ？ばぁちゃんのかわりに来ただけですから。もう帰ります。」

ぐぅ〜

「ふっ、なんやいい音やなぁ。今は他のお客さんもおらんし、軽くメシも作ろか？」

そういえば朝ごはんまだだった..

「...はい。お願いします。」

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「ん〜！美味し〜！」

野菜たっぷりのサンドイッチはため息が出るくらいに美味しかった

「そりゃよかった。それうちの看板メニューやからな。」

アイスコーヒーもすっきりしていて飲みやすい

「すごいです。こんな素敵なお店を切り盛りしてるなんて。こじけんさんって、」

「褒めてくれるのは嬉しいねんけど、その呼び方どうにかならんの？あと、敬語やめるって約束したやんか。」

そうだった...サンドイッチと引き換えにタメ口にしてくれと言われていたんだ

「う、うん。わかってる。こじけん。」

「そうそう。その調子。」

カランカラン

『ケン坊！やってるか〜！』

「おっちゃんまた来たん？それにここ飲み屋ちゃうねんけど。」

『すまんすまん。ここ居心地良くてさ〜。いつものよろしく。』

「はいよ〜。」

微笑ましいやり取り

こじけんは常連さんともいい関係を気づいているんだな、

そう思うと同時に少しだけ切なくなる

フラッシュバックしそうな記憶に蓋をするように唇を噛み締めた

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