記録１９：僕のもの ページ19
なんだ？この胸が押し付けられる感覚は…。
息をするのが苦しくなってくる。
嗚呼、彼と速く話がしたい。
また彼の表情を見たい…。
そんな考えでいっぱいだった。
しかし次の瞬間、僕は吐き気のするような光景を見てしまった。
彼が…僕のトリスタが、女のサバイバーを抱き締めていた。
「(え…)」
なんで？なんでそいつを抱き締めてるの？
儀式終わりに『疲れた〜ぁ…』と重たい体を僕に預けてくれた君は、自分から抱き締めに行ける力があるのか？
そんなことはどうでもいい。
今すぐにでもあの女を殺したい。
彼は僕のものだ。
どんな色目を使ったのかは分からないが、これは相当万死に値するぞ…！！！
ナイフを取り出し、無防備を発動しようと女をマスク越しから睨み態勢を取った時、僕にある考えがよぎった。
「(そうだ…いっそのこと、あの女に絶望を与えよう。)」
トリスタには悪いけど、僕以外の女に目を付けた事への罰として殺そう。
どうせこの世界では『死』なんて存在しないんだ。
次に目を開ければあら不思議、生き返ってる。
そしてあの女…彼を殺したあとに、女の情報を集めなければ。
どうすれば絶望するか、じっくり入念に計画を立てて殺してやる。
彼が自分から抱き締めに行くほどだ。
相当な色目を使っているはず…もしかすると…肉体関係…いや、それは考えないことにしよう。
「エンティティ様」
僕は大急ぎで邪神のいる場所に向かい、ある取引をした。
《ほう？面白そうだが、それをする事への私のメリットは？まだ私の気は済んでおらん。あのトリックスターを儀式中に処刑し、魂が私の元へ届くまではな。》
「それならこんなのはどうでしょう。かくれんぼという体で儀式を行い、彼をメメントで処刑するのです。」
《なるほど。それなら許可する。》
「それからあともう一つ。これは質問なのですが…彼を処刑した後、彼をキラーに戻す余地はありますか？」
《ふむ…その時になれば分かるまい。私を満足させてくれよ？》
「承知しました。」
これですべての計画が立った。
空に珍しく月が見えた。
あの黄色い満月と彼の目の色を合わせてしまう。
想像する度、胸が苦しくなる。
速くこの気持ちを晴らそう。
「待ってて、トリスタ。僕が取り戻すから」
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作者名：おひさま | 作成日時：2021年11月28日 16時
