1. absk ページ1
「じゃあ俺外行ってるよ？」
「うん。そのうち追いつく」
照が廊下の奥の方に消えて、校舎からはほとんど人がいなくなった。
所々開け放たれている大きな窓からは春の匂いの風が流れてくる。
それと、別れを惜しむ人々の声。
笑い声も泣き声もぐちゃぐちゃになって、彼らの思い出はまたひとつ積み重なるのだろう。
窓の外にまだ咲き始めたばかりの桜が見えて、
いろいろ思い出して寂しくなったから頭を振る。
思い返してみれば、すごく不思議な日々だったなと思う。
ただの校内の係で集められて、たまたま一緒になっただけだったのにすごく仲良くなって。
昼休みに集まって遊んでたことがもう遠い昔のように感じられる。
またあんな感じでみんなで喋れたりするのかな、
全員が同級生じゃないけど。
そんな想像は切なさをかき立てるだけだった。
別れってどうも苦手だから、少しだけこうしていようかとは思ったけど。
そろそろ照に気づかれる頃か。
戻ってきたらめんどくさいだろうな……
じゃあ行かないとダメか、と教室の扉に向かう。
と、突然扉が開いてびっくりする。
大きな音を立てて乱暴に開けられた扉とは反して、佐久間がすごくしんどそうに立っていた。
走ってきたのかな？
「いた！もう、疲れさせないでよ……」
「なんか苦しそうだけど」
「阿部ちゃんのせい」
少しからかってみたら、彼は寂しそうに笑った。
「なんで来ないの。ひどいじゃん」
「ごめん」
「いいけど。……あのさ、俺」
いつもと同じ喋り方。
けど、いつもは饒舌な彼が、今は言いたいことに詰まっているような気がする。
「一緒に写真撮ってほしい」
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次から、side変わります。
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作者名：こころ | 作成日時：2020年3月6日 18時
