先入観 ページ41
昼下がりの夏らしい日が差す病院の廊下。俺は真っ先にAの部屋へ向かった。
こつこつなる足音は軽やかながら、俺の心情を無視するように空気の中に薄く溶けていく
手術は成功、あとはAが目を覚ますだけで何も心残りなどないはずなのに。
廊下に取り付けられた窓からは、憎らしいほど透き通って綺麗な青空が広がっていた。
...見とれるように足を一度止めた。空きっぱなしの窓からは爽風が微かに吹いてくる。
揺れた髪を反射的に手で押さえ、整える。彼女が褒めてくれる、青い髪。
...不安も心残りもある。自分で自分に嘘をつくなんて、滑稽なものだ。
単純だ。自分が知らないところで失敗し、彼女を殺していたら...というくだらない不安。
そして、俺を避けるまでもAを愛していたマサキの恋心を踏み潰した、という心残り。
どうしようもないことなどわかっている。だけど、自分を優先したこともよく理解していた。
年齢だとかすることしたことで、Aの元へマサキより先に橋を渡ってしまっていた。
[...渡るならまだしも、その橋を壊して嘲笑ってるみたいだ]
綺麗すぎる青空から目を逸らした。
どれだけ美しく染まった赤い林檎でも、中身が腐ってないとは限らない。今の俺みたいだった。
再びAの病室へ向かう。あと少しだけ歩けばつくから。
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しっかりと部屋の番号を確かめ、ドアを開けて入った。個室のせいか少し狭い部屋へ。
少し大きく白いベッド、木製独特の焦げ茶色が出たベッドより高い薬棚、何本かの管。
足音を忍ばせ、彼女の眠るベッドに近寄った。
まだ目を覚ましていないAは、落ち着いた呼吸を繰り返している。
ベッドのふちに腰掛け、指でAの頬をなぞる。足音ほど遠慮はしない。出来なかった。
「早く目を覚ましてくれよ」
そう言って、眠り続けるAの唇に自身の唇を触れさせた。
悲しくも、それに願ったほどの熱はない。目が覚めるまでは無理だと思っていたが。
頬から口元へ指先を這わせて移動させる。微かに感覚が違っていくのを感じながら。
その時だった。
本当に少しだけ、何もしていない指先が揺れた。思わず驚いて手を除け、顔を近づける。
ぴく、と瞼が揺れたのがしっかりと目に見えた。
「A！」
やれやれ、なんで足音ごときで遠慮したのかわからないくらい声を荒らげてしまう。
ただ呼びかけに応じて、彼女はゆっくりと目を開いた。
「...風丸君...」
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
