どちらを ページ21
ゆっくりと、それでいて淡いまま彼の言った言葉が頭に再度響いた
あの時マサキ君が伝えてくれた言葉が。
オール5の成績表も、一際目立つ試合も、内緒のおまじないも
私がここからいなくなったら、まるでなかったように強制終了されてしまうんだ。
それが死の後だけではなく、病気が治った後も同じということに今更気づく。
そっか、君は知っていたんだね。
一人で悩んでいるのか困っているのか、それさえ分からないけれど
私は私の知らないところで、また君を苦しめていたんだ。
「私はどっちの幸せを掴めばいいの？」
玲名は突然の質問に、驚いたような表情になる。自分でも言ってから自分で驚いた。
でも分からない。私にとってはどちらも至高の幸せであって、長年の夢だったから。
自由って厄介だ。欲する時には来ないくせに、来たと思えば皮肉たらしく道を塞ぐ。
どちらの手を掴めばいいんだろう？
風丸君は、長くずっと私を愛してくれて。今だって救おうとしてくれていて、ずっと信頼してる
でもマサキ君は、辛くなっても傍にいてくれた。誰よりも優しく慕ってくれた可愛い家族だった
今更片方を切り捨てるなんて。
自分を守ってくれた手を切り落とそうだなんて、最悪だ。
咄嗟に怖くなって、確認の意も込め
伸ばしたままの憎い赤色の髪が視界のほとんどを埋め尽くした。玲名が見えない。
「勝手にしろ」
僅かな間、時計の秒針が出す細かな音だけが聞こえるくらい静穏に包まれた。
ゆっくりと重い頭を持ち上げる。
いつも通り、呆れたようにため息をつく玲名がそこにいて。
「お前の人生まで指図する気はない。どれだけ喚こうが騒ごうがお前の人生だ。
他人に選択を委ねるなんて、結構な損としか思えないな」
頭が真っ白、いや透明になった気がした。
また当然のことを突きつけられてしまった。[あぁ、それはそうだな]としか言えないような。
また鼻の奥と喉が詰まるような感覚に襲われる。悔しいのか、悲しいのか。
あと二日。
あと二日で私の人生を決めなくちゃ。
本当に愛したい人を決めなくちゃ。
自分に言い聞かせるように、何度も何度も心の中で呟く。
愛したい人を。
きっとこれが最善なのか、と聞かれたら答えられないだろうけれど
どうか。
どうか許して、×××。
どうか愛させて、×××。
最後まで愛しきれなくて、ごめんね。
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
