誘 拐 犯 。@K.Tomohiro

episode 26 ページ27

どれだけ走ったやろ。



気がついたら、知らない住宅街にいた。



大毅の家がある集合アパート団地じゃなくて、ホンマに一軒家が立ち並んだ所。



ここ、どこ？



ってかその前に、疲れた。



その辺にあった公園のブランコに1人で座る。



と、同時に自然と涙が出てきた。




大人気ない自分、大毅を許したくても許せない自分が情けない。




『っ………何でなん。 何でなんよぉぉぉぉ！！！！ アタシ等5人、仲良いグループなんやなかったん？ それなんに……大毅はアタシと回るって聞かんで！ おかしゅうない？ 神ちゃんがどんな思いでこの旅行企画してくれたんか考えてみぃや！ 親友ならこんぐらい分かりなさいよっ！』



近所迷惑なんかお構い無しに、最大の声で叫んだ。



怒りの元を全部ぶちまけたら、不思議と怒りも同時に吹き飛んで。



代わりに来たのは、見知らぬ場所に1人で来てしまった不安と悲しみ。




『………もうアタシ……どうしたらええんやろ。このままみんなに気づいてもらえんかったら……』



涙も枯れることなく流れ続け、夏の暑さも容赦なく襲ってくる。



汗が全身から吹き出し、水分がどんどん奪われていく。



喉の乾きも限界を迎えてきた。



所持品、ゼロ。



所持金もゼロ。



近くに公衆電話も自販機もあるのは分かってる。



でも、金がない。



労力ももう残ってない。



『……助けて。 助けてよ………。







神ちゃん。』



極限状態に思い浮かぶ人の名前は、



何故か彼氏ではなくその親友。



『大毅の……バカ。』









?「そんなに彼氏貶したらアカンで？」

episode 27→←乃慧琉's Room

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す