誘 拐 犯 。@K.Tomohiro

episode 16 ページ16

智「ちょっ！ Aちゃん！ 」



神ちゃんの叫び声で我に返った。



『うわっ！ ヤバッ！』



何分考え込んでたんだろ。



お湯は鍋の中で煮えたぎり、溢れんばかりの泡が立っていた。



『アタシ、何ぼーっとしてたんやろ。 パスタ入れるな。』

智「おん。 こっちソースは出来たよ。 後で盛り付け一緒にしよな。」



パスタを右手に取り、左手で鍋の取っ手を持って入れ、



ようとしたその時。



ﾊﾞﾝｯ。 ｼﾞｭｯ。



『あっつぅぅぅ！！！』


右手がもう一方の取っ手に当たって、その拍子に鍋がひっくり返ってしまった。



支えていた左手にはガッツリお湯が被り、感覚が無い。



智「Aちゃんっ！ 大丈夫？」

『おん… 何とか。』

智「とりあえず水道で冷やして！ 俺、氷袋作ってくるから！」



言われるがままに水道の蛇口をひねる。



熱い左手に冷たい水道水が染みて、体に激痛が走る。



と同時に、頭が冷静になってきた。



神ちゃんの的確な支持、アレはその場限りの頭の回転じゃ出来ひん。



5人兄弟の真ん中って言いよったし、多分妹さんのお世話しとるうちに身についたんやろうな。



でも、こういうのをサラッと出来ちゃう神ちゃんがキラキラして見える。



………もし、今ここにおったんが大毅やったら。



多分やけど、慌てふためいて大毅の方が焦るんやろうな。



サラダ作っても、トマトの大きさバラバラやろうし。



ソース作っても、胡椒の分量間違えてそうやし。



ってアカンアカン！！



何で大毅と神ちゃん比較しとんの？




大毅は彼氏、



神ちゃんは友達。




立ち位置が全然違うやん。





アタシ、今日なんか変。

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