柳田と柳田、そして石川。26 ページ27
▽
「……?呼んだ?」
「え?なにが?」
「…………気のせいか、」
なんだろう。呼ばれたような気がしたのだけれど。しかしこの部屋には妹とあたししかいない訳で、その彼女が頭にハテナを浮かべているのだから、そう思うしかない。再び、濡れた髪をガシガシと拭き始める。
すると、「お姉ちゃんさ、」と今度こそ呼ばれた。
「向こうでなんか言われたの?」
「…なんかって、」
「元気ないもん。帰ってきてから」
「……、」
鋭いな、と思う。……いや、前々から彼女はあたしの細かな気持ちの動きに敏感だった。きっとこの子のお母さんが、そういう人だったんだろう。
あたしの母、のんびりとしたあの人とは違って。
「……親不孝者だって、言われた」
「…え、なにそれ。雅紀さんに?」
「いや、お父さんはそんなこと言わんよ」
妹は、言うなれば父の浮気相手の子供。亡くなった姉の葬式で、あたしは彼女と初めて出会った。
『……知らんかった、』
『そう。だから別に気にしないでいいよあたしのことなんか』
『…お姉ちゃんのこと、知りたい?』
『、なんで、』
『だって姉妹やん。仲良くしようよ』
常識的に考えて、あたしの行動はおかしかったんだとは思う。でも別になんだって良かった。ただお母さんが違うだけで、嫌う理由もなかったから。それに、ただ単純に、妹がいるということが、嬉しかった。
「バレー、続けなきゃ駄目だよ姉ちゃんは」
「……、」
「姉ちゃんからバレーとったらなんにも残んないでしょ?」
「…まあね、」
姉とも、母とも似ても似つかない、サバサバした性格。
そんな彼女にはいつも助けられていた。
「それに、ここに姉ちゃんが来る理由なくなるの、あたしやだもん」
いつか、妹のお母さんに会ってみたいな、なんて。
そう言ったらきっと、怒られるんだろうなあ……笑
「…別に辞めたってくるよ」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
「嘘だ〜」
「……お姉ちゃんの言うことが信じられへんのか〜」
「きゃー笑」
少し、元気がでた、気がする。
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みずき(プロフ) - 久しぶりに伺いました。ダラダラとは感じてないし楽しくて読ませていただいてます!!これからも更新楽しみに待ってます! (2017年1月10日 8時) (レス) id: ef18299a82 (このIDを非表示/違反報告)
美紗(プロフ) - 今一気読みして読み終わりました!まえださんのお話とても面白いです!これからも頑張ってください(^-^) (2016年12月12日 18時) (レス) id: be30bc9546 (このIDを非表示/違反報告)
サラ - キャラクターは書いている内に勝手に動き出す!って言いますよね! 本当にまえださんの書く祐希くんは可愛くて男らしくて大好きです! まえださんの心のままにどうぞお体にお気を付けてゆっくり更新して下さいませ。ステキなお話ありがとうございます! (2016年12月12日 7時) (レス) id: 58f1eda3d9 (このIDを非表示/違反報告)
まえだ。(プロフ) - サラさん» 自分の石川祐希像が現れてしまっている……(笑)ここからどう恋模様に繋げようか、子犬が狼になる瞬間をどう描こうか模索中です( ̄▽ ̄) (2016年12月9日 4時) (レス) id: 0f6ce9faf2 (このIDを非表示/違反報告)
サラ - まえださんの書く祐希くんはとても可愛くて素直で良い子でキュンキュンします! (2016年12月8日 6時) (レス) id: 58f1eda3d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まえだ。 x他1人 | 作成日時:2016年6月16日 15時