柳田と柳田。

柳田と柳田。4 ページ5

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「……よし、９本目」









コースはばっちり。やっと６割いくかいかぬか、ジャンプサーブもようやく板についてきた。よしよし。時間ももう知らぬうちに21時半だし。次の１０本目が終わったら宿に帰って寝よう。





睡眠は、大事。









「…はあ、…あっつ、」









まだ５月、といっても体育館は少し暑い。運動してたらなおさらだ。




たらり、と流れる汗を、いつも通り服を捲し上げて拭く。あーこれ、いつも試合会場でやったら遥に怒られるんだよね。「女の子はお腹見せちゃダメ！」って可愛い顔して。あたしは気にしないのに、……ってこういうところが男っぽいって言われるのか。
それでも気にしないけど。








あ、ボール……









「……は、？な、」








……。






……うん、なにか見てはいけないものを、見てしまった気がする。ってかなんでこんな時間にここにいるんだ、…ってそれはあたしも思われてるか。







転がったボールをなにごともなかったように拾って去ろうとしたいが、そうもいかない。もう目が、合ってしまった。









「み、見てない見てない、Aの綺麗な腹筋とか見て、」

「「関田うるさいから」」









……うん。「うわ、ハモった！」なんてわかってるから言わないでくれ、石川くん。くっそ、この日一番の失態。てか関田あとで説教だな。









「……なにしてんの、まだこんな時間まで」








そんなビミョーな沈黙を破ったのは、そのあたしとハモった張本人、柳田(やなぎだ) 将洋。







その目も。その、何を考えてるかわからない目も、好きじゃない。







あぁもう。したたる汗までも、うっとうしく感じる。









「別に、練習です。……そっちこそ、なにをしに？」

「あ、俺が体育館見たいって言って連れてきたんす」

「……んでなんでシューズ履こうとしてんの？馬鹿なの？」








えへへ、って石川くん君ね、可愛いけども。

これはあれか。やるってことなのか。こんな時間から。馬鹿なの？じゃなくて、馬鹿だな。









「えっ、Aも一緒に、」

「やらない。あたしはあと１本サーブ入れたら帰るから」

「えぇー、Aさんやりましょうよ」








史上最高の逸材くんの誘いも、せっかくだけど丁重にお断りしておく。なんせ時間も時間だしね。……まあ、それだけじゃないけど。









「……」









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