柳田と柳田。

柳田と柳田。過去編 34 ページ35

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「別にやめようと思えば、やめれたんだとは思いますけどね」








でも結局３年間、続けました、とAは言った。人差し指で、ボールをクルクルと回転させながら。なんでもないことのように、さも、日常的な会話をしているかのように。






……それがまた、Aが持つ過去の苦しさを表しているようで、俺は言葉をつまらせる。









「……バスケは好きですよ。今でもずっと」









そんな俺を気遣ってか、この空気を嫌ってか。







彼女はまた、次は俺のいる目の前で、ゴールに向かってボールを投げた。








綺麗なフォームで、彼女はジャンプする。









……がこん、









「…たとえ、あの３年が無駄だったとしても、」









そのボールは、一度リングに当たるも、するっと、ネットに入っていった。









「あたしは今が、楽しいですから」









そのボールと同じように、彼女の言葉も俺の心にスッと入りこんで、きた。









あぁ。
苦しそうじゃ、ない。









「柳田(やなぎだ)さん、バスケできます？」

「……馬鹿にしてんだろ」

「いえいえ、」









きっと。




きっとまだまだ、彼女は多くの『過去』を背負ってると思う。俺に話したことも、そんな中のただの一部にすぎないんだろう。








……でも、それでも。









「……やりますね、」

「あたりまえ。こう見えても負けず嫌いだから、俺」

「いやいや、どう見ても負けず嫌いにしか見えないですけど」

「！……」

「…なんですか、」

「……お前今笑った」

「……え、」

「というかたまに笑ってるけどな」

「……そう、ですか」









俺は、その笑顔を今見れているのなら、それでいい。









「まぁ、楽しい時は笑えるんだと思いますよ」









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