柳田と柳田。過去編 30 ページ31
▼
「……今日は暑いな、」
今日は合宿中唯一のオフ日。ちょうど中間の日。なんだかこの合宿は早く終わりそうで、ちょっと焦る。部屋にいてもまだ寝ている祐希のいびきがうるさいので、気分転換に外にやってきた。
まだ昼にもなっていないというのに、太陽は元気だ。
「あれ、柳田くんか?」
そんな眩しく光る太陽に目を細めていると、背後から声がかかる。ここらでは聞き慣れない、それでも俺たち選手にとっては身近に聞き覚えのある、関西弁だった。
「徳田さん、」
「おおやっぱり。なんか男前が立っとるなぁ思ったから声かけに来たんや」
「ははっ、相変わらず口がうまいっすね」
うわははっ、とひとつ笑ってから、カメラマンさんと思われる人やほかの人に「先行っててええで、後ですぐ行くわ」と声をかけた。大ざっぱそうで、こういう細かい気遣いができるところが、俺のこの人の好きなところだ。
「今日は取材、だったんですか?」
「おう、そうや。急遽、Aちゃんにな」
……なるほど。さすが徳田さんだ。多分初めてAが見せたバックアタックのことについてでも聞きに来たんだろう。行動が早い。「いやぁ、でもAちゃん、美人さんなってたわぁ」なんていう顔はやっぱりどこにでもいそうなオジサンだけど。
「まぁでも昔から変わらず、あいつは笑わんなぁ、笑」
「え、……笑わないのって昔からなんですか?」
「あぁそやそや。あいつがバスケやっとった頃からやで。ほんまカメラマン泣かせやわ〜」
「……バスケ、」
……そういえば、あいつからバスケをやっていた頃の話を聞いたことがあるだろうか。まぁ俺に対してはもちろん無いにせよ、テレビ、取材等でも、ないのではないだろうか。
「……徳田さんって、あいつといつからの付き合いなんですか?」
「そやなぁ……って、なんや。気になるんか?Aちゃんのこと」
「え、あ、いや……まあ、」
…うん。バスケは俺も好きだし、そういう点でいえば、気になる、のかもしれない。うまく答えられない俺を、また、うわははっ、と徳田さんは笑った。
「ま、あいつが話したがらんからしゃあないわ。あんまええ思い出ちゃうしな、」
そう言った徳田さんの表情は、さっきの笑いとは食い違った、真剣な表情で。俺は、そんな徳田さんを見つめることしか出来なかった。
▼
528人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まえだ。(プロフ) - 成瀬▼さん» ありがとうございます(;▽;)頑張り、ます!!! (2016年11月28日 23時) (レス) id: 0f6ce9faf2 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬▼(プロフ) - まえだ。さん» わぁ!来た!って感じに声が出ちゃいました、笑 書いてたらそういう時もありますよ!、自分も書き手なのでその辺めっちゃわかります、笑笑 更新してください!笑 いくらでも待ってます( 'ω')/ (2016年11月28日 20時) (レス) id: 38f3ec8e87 (このIDを非表示/違反報告)
まえだ。(プロフ) - 成瀬▼さん» きゃーーーー!!なんたる嬉しいコメント(テンションが高い笑)……と共にお待たせさせ過ぎてしまったという罪悪感が今襲ってきております……更新します、しますよ!こんな作者なので(笑)、気長に待っていて下さると嬉しいです(;▽;) (2016年11月28日 20時) (レス) id: 0f6ce9faf2 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬▼(プロフ) - “「柳田と柳田。」が更新されました”っていう通知が来て思わずテンション上がりました、笑 お忙しいかも知れませんが更新するのを応援してます( ´ ▽ ` )ノ (2016年11月28日 20時) (レス) id: 38f3ec8e87 (このIDを非表示/違反報告)
まえだ。(プロフ) - iceAcinderellaさん» ありがとうございます(^ν^)続き、パスワード外しましたんで、まだ設定しかないんですけど(笑)、よろしくですです。 (2016年6月20日 1時) (レス) id: 4cf1416a93 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まえだ。 x他1人 | 作成日時:2016年5月22日 18時