5『閲覧』 ページ5
「おや。読み終わっていたのかい」
ルーク先輩は、ベンチに座る私たちの前方へ回ってきた。
私は、下ろしていた腰を持ちあげて先輩に本を差し出す。
「おかげさまで今日のテストは満点でした。ありがとうございます」
「本当かい？ 素晴らしい！ キミの努力が身を結んだのだね」
私から本を受け取ったルーク先輩は、愛おしげに本の表紙を撫でる。
「これは、私が今のキミと同じく古典文学を学びたい時に、とある人物から貸してもらったものでね。元の持ち主に返却してからも、自分で同じ物を購入して大切に読んでいたのさ」
「……へえ。おいくらでしたか？ それなりにしたでしょう？」
「確か4000マドルほどだったよ」
「そうだ、ルーク先輩超お金持ちだった……」
「ふふ。気を遣って小声にしているようだけど、キミの声はちゃんと私の耳にまで届いているさ」
「聴覚までバグってるんですか先輩……？」
「お褒めに与り光栄だよ」
私とルーク先輩でテンポ良く会話していれば、「ねーねー先輩」と会話に入るエース。
「その本、どういう話なんですか？ オレにも教えてくださいよ」
「おや。キミも興味があるのだね」
ルーク先輩は快くエースに本を差し出した。
想像以上の分厚さだったのか、エースは「重！」と言っている。
「うわ〜……え、先輩もカントクセーも、これ全部読んだの？」
「ウィ。当時は３日ほどで読み終えたかな？」
「私は２週間かかった」
「いや、２週間でもすごい方だろ。初めて監督生のこと尊敬したわ」
「初めては余計」
「ルーク先輩、オレも読んでみてもいいですか？」
「もちろん！ 心ゆくまで楽しんで」
ニコニコ笑顔のルーク先輩に笑い返してから、エースは中身を読み始めた。
今回の古典文学のテストでは満点とまではいかなかったものの、ちゃんと平均点より上を獲得していた彼だ。内容はおおむねわかるだろう。
「……」
目の動き、まばたきの回数。想像するに、エースは文章を読み解くスピードが早い。
あっという間に１ページ目をめくると、ぴくりと眉を動かした。
隣からそれとなく覗くと、私が「子供だまし」と
この物語では、冒頭から結論を述べている。教訓やもっとも伝えたいことがはっきり書かれているのはシンプルでわかりやすいが、シンプルすぎるが故に、評価が分かれる。
エースはどちらだろうか。
こういう夢物語を、信じるタイプだろうか。
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作者名：りんこ x他1人 | 作成日時：2023年12月12日 20時
