4『変だけど良い人』 ページ4
.
「おやおや、楽しそうな戯れだね。叶うのなら、ぜひとも混ぜてもらいたいものだ」
「「！」」
突如背後から掛けられた声に驚いたエースが、掴んでいた私の手首をパッと離す。
私たちの座るベンチの後ろの草陰がガサリと音を立て、そこから現れ出たのは。
「る、ルーク先輩！？ びっくりしたぁ」
「ボンジュール、ムシュー・ハート。そして、監督生くんも」
ポムフィオーレ副寮長の、ルーク・ハント先輩だった。
エースが「心臓に悪い……」とぼやきながら文句を垂れる。
「もう〜いきなり驚かさないでくださいよ先輩。どうしたんですか？」
「ふふ、すまないね。キミたちの戯れる様子があまりにも愛らしかったから、高ぶる感情を抑えきれず飛び出してきてしまったよ」
抑揚ある話し方に、大げさな身振り手振り。そして極めつけにチャーミングな微笑みとウインク。
この一連の様子を見ただけでも、彼がそこら辺の人たちと比べてちょっと(？)変わった人であることは、誰が見ても明白だろうけど。
「それに、
キミたちがこうして平和に、幸せに暮らしているのを見るだけで、私の胸には喜びが込み上げてくるのさ！」
……こんなふうに、ルーク先輩はいつも人に対して愛情深く接することのできる良い人だってわかるから、憎みきれない。
思わず瞳を緩めて先輩を見つめてしまう私とは対照的に、エースはげんなりとした様子。
「先輩、気にかけてくれるのは嬉しいっすけど、あんまり観察されすぎてもちょっと怖いっていうか……こういうこと起きんの一度や二度じゃないんですケド〜」
「おっと、それは申し訳ない。
……だが狩人の好奇心はどうにも抑えきれなくてね。私から逃げ切ってみておくれ、ムシュー・ハート。
そして監督生のAくん。もちろんキミもね？」
まさにターゲットに狙いを定める猛禽類の如く目を細めたルーク先輩に、私はごほん、と咳払いしてから話を切り出した。
「ところで、ルーク先輩。
今日お会いできてちょうどよかったです。なかなかタイミングが合わなくて返しに行けてなかったんですけど、この本、今日お返ししますね」
私は普段から持ち歩いているショルダーバッグの中より、一冊の本を取った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りんこ x他1人 | 作成日時：2023年12月12日 20時
