乙女よ、世界を知れ【エー監】 (ページ3)

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3『ホントの気持ち』ページ3

目的のスペシャルサンドウィッチを購入し、サムのミステリーショップを後にした私とエースは、中庭のベンチに腰を下ろした。

　井戸の奥から、ぽちゃん、と水の跳ねる音がする。今日の中庭はほんのり静かだ。

　隣で「うんめー」と幸せそうにサンドウィッチをもぐもぐ頬張るエースの横で、私も彼と同じものをひとくち含んだ。

　……美味しい。

「んで、監督生。なにかあった？」

「え？」

「さっき話したのにもう忘れたのかよー。なんかここ最近のカントクセー上の空だけど、なんかあったの？」

　もぐもぐ頬張る彼が、気さくに問いかけてくる。この堅苦しすぎない、明るい雰囲気で、つい自分の気持ちをすべて預けそうになる。いつも流されそうになる。

　それだけエース・トラッポラは、人の懐に入るのが上手すぎるのだ。

　しかし、今回ばかりは、この思いも打ち明ける気にはなれない。

　これを話すということは、自分が一体どんな物事に対してネガティブな感情を抱えて、何について悩んでいるのかを晒すということ。

　そうする行為には勇気がいるし、何より……恥ずかしい。

　誰だって自分の弱みはなるべく内に秘めていたいもの。たとえ「マブ」と呼べるほどの関係性を築けている彼から、そうするようお願いされたとしても、だ。

「なんでもないよ、エース。強いていうならちょっと寝不足だったかな？でもそんなの今に始まったことじゃないし」

「ふーん」

「逆にエースは平気？最近辛いこととか変わったこととか、ない？」

「ぜーんぜん。あるとしたら、おまえがそうやって辛気臭い顔でなんか悩んでんのに、マブのオレにちっとも教えてくれなくて辛い〜、とか？」

「あんたねぇ……」

「あははっ！ま、抱え込みすぎんなよ。そーやって溜め込むのはお前の悪い癖〜」

　エースはそう言っていたずらっ子全開に、サンドウィッチを持っていない片手の指で私のおでこをツン、と押した。

「いった！」

「大げさ。そんなに強くしてないって」

「してる……！」

　仕返しだ！とかなんとか言って私もやり返そうとするのに。

　素早くその手首を掴まれて「やーだよ〜」と意地悪に笑われた時は、さすがに腹が立った。